東京・神奈川・千葉 同胞生活相談綜合センターを訪ねて

地域性生かし同胞に密着

深まるネットワーク
重要な巡回相談員の役割
すべての生活、権利問題に対応


 同胞の生活と権利を守るため「同胞に奉仕するセンター、同胞が気軽に訪ねて来られるセンター」を合言葉に、昨年1年間に、全国143の総聯本部・支部で旗揚げされた「同胞生活相談綜合センター」。各センターでは地域の特性を生かしながら同胞社会に密着し、生活上の様々な悩みの解決に全力を注いでいる。関東近県のセンターのこの間の取り組みを取材した。

役所で聞いた 

 昨年7月に開設された東京・池袋にある豊島同胞生活相談綜合センター。かつては、千川を中心に同胞が密集して住んでいたが、区画整理で散らばり、今はそうした密集地域はない。それだけに、総聯支部はこの地域の同胞が集う、重要な拠点でもあった。

 だが、センター開設後は、総聯傘下の同胞だけでなくあらゆる同胞が訪ねて来るようになった、と話すのは許明道同胞生活部長。相談案件数はそれほど多くはないが、先日も南朝鮮から来た同胞が、役所で聞いたといって相続問題で相談に来た。

 豊島区内には、1人暮らしの高齢者が多い。そうした地域状況を踏まえて、支部では年間を通じて高齢者・福祉問題に力を入れてきた。だからこそセンター相談員の役割が重要になってくる。

 「年金や介護保険の問題など、月に2、3度は必ず勉強会を開いている。もちろん複雑な問題は専門相談員に持ちかけるが、急な事で電話をしてきた同胞に、ちょっとわかりません、は通じない。看板を掲げたのだから、しっかりやっていきたい」(許同胞生活部長)

 行く行くは、江戸川センターでやっている「デイハウス」のような高齢者施設を作るため、今まであった高麗長寿会をまとめて行きたい、とも語る。

まず信頼関係

 地域密着の大切さを、センターの看板を掲げたことでいっそう感じるようになったと話すのは神奈川・神港センターの金日鉉所長。

 神港支部ではこれまで、緑区にある150坪の土地を年間1万円で借り、野菜などの栽培を40、50代のアボジ(父親)たちで4年前から始めた。昨年、センター開設と同時にそこを一般同胞にも開放し、自由に使えるようにした。

 一緒に野菜を栽培することによって気持ちが行き交い、また、採ってきたサンチュ、唐辛子、カボチャなどを持って、同胞宅を回ると、これまで支部の集まりに積極的でなかった同胞もドアを開けて話をするようになった。すると、総聯組織に固定観念を持っていた同胞らが、少しずつ支部に顔を出しはじめ、相談をセンターに持ちかけてくるようにもなったという。

 昨年は、同胞高齢者の老齢福祉年金を受けるための申し入れにいったことを民団同胞にも知らせ、一緒に受けられるようにした。

 大きな支部では、同胞を集めるため、色々と趣向を凝らしているが、1人で何役もこなさなければいけない小さな支部では、徹底的に同胞と地域に密着することが大事だと金所長。 

  始めから何でも相談しなさいと行っても、まず信頼関係が必要だ。「地域にあった方法を見つけ、生活に関わっていくことで、同胞を結ぶ縦割りじゃないネットワークを作る」が、センター開設の意義だと力説した。

口コミでも

 千葉県内には、昨年5つのセンターが開設された。旗揚げして半年、口コミで知り訪ねて来る同胞をみて、今何が必要なのか見えてきたという。

 先日も、産業廃棄物の処理問題で同胞が相談に訪れた。センターで対応し、専門業者を紹介、解決の方向に向かっている。

 千葉同胞生活相談綜合センターの沈載熊所長は、「何よりも巡回相談員の心がけが大切だ。しっかり対応すれば、80%は解決できる」と話す。だが、今センターで一番頭を痛めているのが融資問題だ。「センターと商工会がタイアップして、少しでも困っている同胞の手助けになるよう思案中だ」。

 さらに、朝鮮学校に通う子どもたちの助成金の引き上げなど、生活と権利における問題を、センターの名で着実にこなしていきたいという。

 これからセンターをどのように運営し、成果をあげていくかによって、21世紀の在日同胞社会の豊かな民族ネットワークの未来が展望できるといえる。(金美嶺記者)

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