家庭―花あかり人

「普通の母さん」の感覚を政治の場へ

川田悦子 代議士

世論を動かした「人間の鎖」から6年。龍平君の母は国会議員になった(写真の背景は広島県呉豊栄高等学校から贈られた人形の鎖=写真・姜鐘錫記者)

  薬害エイズに感染させられた息子・龍平君を支え、その加害責任を国と製薬会社、専門医に問い、闘い続けた川田悦子さん。96年3月の和解後も、薬害エイズの真相究明、医療体制の確立などを訴えてきた。そして昨秋、多くの市民の圧倒的な支持と共感を受けて、衆院補選に当選。今度は、「普通のお母さんの感覚で政治を変えよう」と、国会で孤軍奮闘中だ。

   ●愛する息子の血友病の診断、HIV感染。平坦ではない道程。母として、人間としての格闘を支えたものは何だったのでしょうか。

 薬害エイズの被害は子供から始まった。生きたいと願いながら、治療も受けられないまま殺されていった子供たち。血友病の治療に使ったアメリカからの輸入血液製剤でエイズウィルス(HIV)に感染させられたのだ。厚生省や薬害企業、専門医らは危険だと知りながら対策を立てず、ウソの宣伝をしていた。こんなことを許すわけにはいかない。むざむざとわが子の命を奪われていくのを許してはいけない。そういう思いで立ち向かっていった。

 私は、人が一番辛いのは人を信じることができなくなった時だと思ってきた。10歳で母親の私から感染告知を受けた龍平が19歳で、実名を公表し立ち上がった時、本当に嬉しかった。そして多くのお母さんたちや地域の人たちが「あなたたち親子を餓死させないから、心配しないで闘って」と支えてくれた。手をつないで生きるということがどんなに大事なことなのかをその中で知った。龍平が「多くの人に出会って、不幸だけれども幸せという不思議な気持ちにある」と言った時、感無量だった。

  ●国会での奮闘ぶりを。

 儲かれば何をやってもいいという経済活動がはびこり、企業家も政治家も官僚も国民の命より「お金」が大事とばかり走り回っている。そんな中で薬害エイズは引き起こされた。

 しかし、民事裁判の和解後も情報は隠ぺいされたままで、その後も新たな隠ぺいが行われた。国会で真相究明、情報の開示をさせるのは絶望的に思える。根回しがまかり通っていて、無力感に襲われる時もある。でも、今、降参するわけにはいかない。これ以上政治がひどくならないために、踏ん張らねば。

  ●野呂田発言に象徴される戦争美化の動きが絶えません。

 政治家の恥ずべき発言が繰り返される度に怒りに震える。ごう慢で思い上がっている。日本人が優れていて、アジアは劣っていると見る、戦前からの歪んだ歴史意識を引きずったままでいる。国際社会からどんなに批判されても、反省しようとしない厚顔無恥な体質に呆れる。

 「従軍慰安婦」問題でも、国際社会から日本政府の責任が厳しく問われている。政府は加害責任をあいまいなままにして、きちんとした謝罪も賠償も行っていない。薬害エイズの問題でも政府は責任を認めようとしていない。謝罪することに抵抗する本質は何なのか。根っこは1つだと思う。こんな歪んだ政治を変えるためにも、諦めず、怒りを持って、立ち向かいたい。

 一人一人の人権が尊重される社会を共に作っていきましょう。   聞き手・朴日粉記者

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