「つくる会」の偏向教科書
軍国主義復活の道開く
「検定パス許さない」/歴史学者889人が非難アピール
「史実をゆがめる『教科書』に歴史教育をゆだねることは出来ない」。日本の歴史学者、歴史教育に携わる高校教員ら889人が、「新しい歴史教科書をつくる会(つくる会)」が文部科学省に検定申請している歴史教科書と関連してアピールを発表。同教科書が採択されて歴史教育に供されることは、「敗戦にいたる戦前のあの独善的な歴史教育の復活に道を開くもの」と非難した。問題の教科書の合否は、3月に判明するが、今後、歴史わい曲教科書に反対する動きは、さらに拡散すると思われる。 同アピールは、網野善彦、中塚明、君島和彦、弓削達氏ら60人が昨年12月に賛同を呼びかけたもの。石山久男・歴史教育者協議会事務局長、俵義文・「子どもと教科書全国ネット21」事務局長らが15日、東京の日本教育会館での記者会見で、889人が賛同したと明らかにした。 「つくる会」が検定申請している中学校社会科歴史分野の教科書は、アジア諸国に対する侵略戦争を「大東亜戦争」と名付け、「アジアの解放を目的としたもの」「韓国併合は日本の安全と防衛には必要だった」と歴史をわい曲している。会見で代表らは、「『つくる会』の教科書が検定に通らないよう、声を上げた」と述べ、「日本政府がこのような教科書を公許し、それが採択されて子供たちの歴史教育に供されることは許されない」と断じた。 また、「つくる会」の教科書は、「歴史学、歴史教育の学問的な達成を真っ向から否定する非科学的なもの」「アジアの世論に挑戦し、日本を国際的な孤立に陥れる危険なくわだてにほかならない」と警鐘を鳴らした。 3月に検定合否、教育行政トップも加担 「つくる会」が作成した歴史教科書を非難する呼び掛けに、900人近い歴史学者が賛同した背景には、アジア各国からの非難をよそに、今後、この教科書が検定に合格する可能性があるからだ。 検定の結果は3月に出る。昨年末、「つくる会」の教科書には100ヵ所以上の検定意見が付いたとされるが、「検定意見の通知を受け(2000年12月)、修正表提出を控える(2001年1月)段階まで来れば、まず不合格になることはない」(「教科書レポート2001」、出版労連)との見方もある。 「つくる会」のメンバーや関連団体は、文部省(当時)に教科書の検定申請を行った昨年4月以降、この教科書を採択させようと精力的に動いてきた。 地方議会に対する請願、陳情がそれで、教科書採択制度から現場の教師の意見を排除することを求めたり、現行教科書の是正を求めるなど、教科書採択に有利な環境作りを画策してきた。その結果、30の都道府県議会と90の市町村議会で、「つくる会」や関連団体の請願、意見書が採択されるという憂慮すべき事態が起きている。(「子どもと教科書全国ネット21」調べ) 一例として北海道議会が昨年12月7日に採択した「教科書検定基準の見直しに関する意見書」(自民・道民議会が提出)は、現行の歴史教科書を「自虐的・反日的」と決め付け、教科書検定基準の「近隣諸国条項」の削除を政府に求めている。 また、町村信孝文部科学相は13日の衆院予算委員会で、現行の教科書を暗に非難する発言を行った。町村文相は小渕政権時に文相を務めた九八年六月、「歴史教科書の近現代史部分は偏向している。検定提出前に是正できないか検討している」とも国会答弁している。 ちなみに、「近隣諸国条項」とは1982年に教科書検定による日本政府の歴史改ざんが、アジア諸国からの抗議で外交問題に なった時、日本政府が侵略戦争の記述を検定で歪めない、と諸外国に約束し、定めた検定基準だ。日本政府の国際公約でもある「近隣諸国条項」の削除を求めることは、アジアに対する絶縁宣言も同然の行為 だ。(張慧純記者)
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