在日本朝鮮人人権協会
同胞国籍勉強会
国籍は本人と国籍法が決定
報告に続き質疑応答が行われた勉強会(2月10日)
外登上の記載は表示/現状回復なら朝鮮国籍
在日本朝鮮人人権協会主催による在日同胞の国籍問題をめぐる勉強会が2月10日、東京・台東区にある同胞法律・生活センターで有資格者、研究者らが参加し、「在日同胞の国籍問題の現状と問題点について」と題して、朝鮮大学校経営学部の任京河専任講師が報告した後、質疑応答、意見交換が行われた。 最初に任専任講師は、現在の在日同胞の国籍がいつ決められたのかについて、「まず、日本の植民地支配のもとで、朝鮮人民は解放当時、日本国籍とされていた。しかし、1952年のサンフランシスコ講和条約の発効にともない、日本国籍から朝鮮国籍となった。しかし、日本のそうした施策は、解放民族への待遇というのではなく、また植民地支配に対する謝罪からの法的処遇でもなかった。外国籍とすることによって、一方的に軍人軍属などの保障、社会的な権利から除外したものだ」と述べた。 そして現在、一部にサンフランシスコ条約によって、「一方的に剥奪された」朝鮮人の日本国籍を原状回復すべきとの論調があるが、「在日同胞の国籍は、原状回復という見方からするならば、日本国籍ではなく、朝鮮の植民地そのものが、当初から無効であったとの見解のもと、朝鮮国籍とすることが妥当である」と指摘した。 さらに解放後の在日同胞の立場は、54年8月30日に当時の南日外相の声明、1963年10月に公布、施行された朝鮮国籍法(いずれも別項参照)によって、朝鮮国籍を有する海外公民として位置づけられている、と説明した。 矛盾した扱い つぎに、在日同胞が持つ、外国人登録上の国籍欄の表示に対する認識の誤解について指摘。「国籍というのは、本来、本人と本人が所属する国家の国籍法で決められるものだ。これは、国籍に関する国際法上の原則であり、どこの国でもそう規定している」と説明した。 その上で、「在日同胞の国籍は、外国人登録法によって決められたり区分されるのではない。表示が『韓国』となっていてもそれは『韓国』国籍を意味するものではないし、現に、外登上『韓国』と表示されても、国民登録をしていない、パスポートを持っていない人もいる」と述べた。 また、朝・日国交正常化がなされていないので、未承認国家である朝鮮の国籍は認められないのではないかという問題について「これも、国籍法が決めることで、日本が承認しているか、いないかによって、本人の国籍は左右されない。だが、日本の法務省は未承認国家を理由に朝鮮の国籍法の適用を認めず、『韓国』国籍法(別項)だけを適用してきた。さらに、65年10月26日の法務省見解は、在日同胞について、旅券など国籍証明書を所持しない特殊事情から朝鮮半島出身者という意味で朝鮮と記載したもので、国籍を表示したものではないとしながら、『韓国』は国籍で、朝鮮は表示とする矛盾した扱いを取った」と述べた。 任専任講師の報告を踏まえて、参加者からは、日本法務省の「韓国」、朝鮮表示に対する差別的な扱いを是正するためにも、まず外登上の表示だけでも本来の統一した表示であった原状に戻すべきとする意見や、「韓国」国籍法によって、国籍を喪失し、日本国籍となった人も、朝鮮国籍を有しているのであり、朝鮮の国籍法の適用を受けることができる、などという指摘がなされた。 さらに、最近の日本国籍法改正の動きの中で、特別永住者への帰化行政の簡素化などが提案されているが、現在、日本の現状は民族と国籍が同一視されており、そうした状況で市民権的な発想で日本国籍取得に走ることは、同化を促進することにしかならないとして、今後も研究が必要との意見が出された。(金美嶺記者) ………………………………………………………………… 南日外相声明 「…朝鮮民主主義人民共和国は、日本政府に対して、日本に居住する朝鮮人の朝鮮民主主義人民共和国公民としての正当な権利を認め、…日本における朝鮮人の居住および就業の自由と生命財産の安全および民主民族教育等、一切の正当な権利を保障し、不法に没収した一切の財産を返還するよう要求すると同時に、このような事態を今後繰り返さないための措置をとることを要求する」 朝鮮国籍法 「第1条1、朝鮮民主主義人民共和国創建以前に朝鮮の国籍を所有していた朝鮮人とその子女で、本法の公布日までにその国籍を放棄しなかった者。 2、外国人で合法的手続きによって、朝鮮民主主義人民共和国の国籍を取得した者」。 「韓国」国籍法 「12条1項 出生その他この法律の規定により満20歳になる前に「大韓民国」の国籍と異国の国籍を同時に有することとなった者は、満22歳になるまでに、満20歳になった後に二重国籍者となった者は、その時から2年以内に…1つの国籍を選択しなければならない。 2項 第1項の規定により国籍を選択しなかった者は、その期間が経過した時に大韓民国の国籍を喪失する」 |