本社記者―平壌レポート

進む渤海の研究

朝鮮考古学会、高句麗継承国と解明


渤海王陵とみなされている減鏡北清津市青岩区域富居
里のヨンチャンコル第1号墓(1997年夏に発掘)


【平壌発=本社姜イル記者 】  「大祚栄は各地で展開された高句麗遺民のたたかいをひとつにまとめ、唐の勢力を追い出した。そして698年、渤海という国を建てた」(高等中学校3年の歴史教科書から)

 7世紀末〜10世紀初の200余年間、現在の朝鮮半島北部と中国東北地方、ロシア東南部の一部にまで及ぶ広い地域を領土とし、東北アジアの「海東盛国」としてその名を轟かせた渤海――。朝鮮では、高等中学校一年の時に初めて渤海の歴史を学ぶが、近年、学ぶ内容が大幅に増えている。

 朝鮮考古学界が近年、新たに成し遂げた研究成果を背景に、1999年に改訂された現行教科書では渤海の建国過程がより詳しく記述されるようになり、渤海の人々が創造した文化について紹介する新たな資料も加えられた。

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 高句麗を継承した朝鮮中世の主権国家、渤海に対する研究が朝鮮で始まったのは60年代だが、本格化したのは90年代以降のことである。

 90年、朝鮮社会科学院に渤海研究グループが設けられ、渤海研究を集中的に行ってきた。とくに、高句麗遺民による渤海建国過程の解明に取り組み、渤海が高句麗を継承した主権国家であることを科学的根拠をもって解明した。同時に、住民構成や領土、政治のシステム、対外関係、経済、文化など幅広い研究を重ねてきた。研究成果をまとめた書物も数多く出版されている。

 社会科学院歴史研究所渤海史研究室の蔡泰亨室長は「渤海史の解明は、朝鮮民族史を体系的に定立するうえで大きな意義を持ち、統一を目前にしたこんにち、いっそう重要な課題となっている」と語る。

 蔡室長は昨年11月、北南朝鮮、中国、日本の学者らが一堂に会して東京で開かれた古代史シンポジウムに出席し、朝鮮における渤海研究の成果を発表している。

 南の学界でも、渤海研究に対する関心が高まっている。しかし、当時の渤海の領土から離れているため遺物、遺跡のない南の研究者による現地調査は、これまで中国の地で行うしかなかった。

 蔡室長は「細かい事実関係で若干の認識の違いはあるものの、北南の基本的な見解は同じだとみなしている。南の学界でも、私たちとの共同研究を望んでいると聞く。1日も早く分断の壁を乗り越え、共同研究を実現させたい」と、汎民族的な共同研究への期待を語った。

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