それぞれの四季

妹 

康明淑


 「もう寝た?」

 先月末の雪が積もった寒い夜、床に入る支度をしていると、妹から電話がかかってきた。こんな時間に何があったのかと尋ねると、妹はちょっと照れた声で、民族学校の教育シンポジウムで、授業が上手な教員として再度表彰されたという。

 「すごいね、お祝いしなくちゃね」

 受話器を置きながら、私はなぜか母が亡くなった日のことを思い出していた。臨終を告げる医師の声をさえぎるように病室を飛び出した妹の後を、泣きながら追った24年前のあの日も、1月の寒い日だった。その年の春、高校を卒業した妹は、「オモニとの約束だから」と家族の意見には一切耳を貸さず朝鮮大学校の師範教育学部に入った。それから今日まで、休むことなく教壇に立っている。

 私にとって妹は、いくつになっても少し利かん気な「末っ子の甘えん坊」。大切な教育の現場で、間違いを起こさなければよいがと、いつもハラハラしている。9年前、私は東京・足立区に引っ越し、子供たちも妹が勤める学校に転校した。それから、授業参観、運動会、学芸会と、折にふれて妹の先生ぶりを見るようになった。

 幾分ふくよかなせいか、チョゴリを着て教壇に立つその姿はなかなかの貫禄。教え子たちと接する姿は、水を得た魚のように生き生きとしている。学生からは「ちょっと怖い」、父母たちからは「ちょっと頼れる」という存在なのかも知れない。今回の表彰で、妹はずっと胸に秘めてきた「オモニとの約束」を果たしたのだろうか。ねぎらいの意味も込めて、私の給料日に2人で乾杯する約束をした。(会社員)

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