「ぼくの国、パパの国」

移民一家の文化摩擦


 ヨーロッパでも有数の移民社会を構成する英国。その大都市マンチェスター・ソルフォードに住むパキスタン人一家の親子の軋轢をユーモラスに仕立てた家族ドラマ。時代は1971年。

 誇り高きパキスタン人、ジョージ・カーンは、34年前に移民にきて15年前に英国人の妻と結婚、英国の伝統的ファーストフード店「フィッシュ&チップス」を経営。6人の息子と1人の娘は、英語を母語として、英国文化の影響をたっぷり受けて育ったパキスタン系英国人。

 第3次インド・パキスタン戦争勃発前夜の祖国の不安な政情がテレビに写し出され、街中で移民排斥の声が高まる中、ジョージは子供たちを立派なパキスタン人にしたいと思う気持ちが高じる。同胞移住地域へ連れていって祖国の映画を観せたり、モスクでイスラムの教えを諭す。母国語のウルドゥ語使用を強い、民族の伝統文化に馴染ませようと懸命になる。

 ついにはイスラム式の見合い結婚を強行し、子供たちの猛反発にあう。

 ジョージの移民1世としての子供たちへの危惧や苦悩が底辺にあるのだが、焦りすぎる余り、殆ど暴君化していく父親像が、家庭内の文化摩擦とも相まって、こっけいに映し出される。

 男子割礼の習慣、肌を隠すためのサリー着用、豚肉ソーセージの食用禁止―等々。英国育ちの子供たちには馴染めないイスラムの伝統文化。この文化的差異による日常的な摩擦が騒動のタネとなっている。

 民族結婚を子供たちに推奨する父親こそが国際結婚している矛盾。子供の将来に理想を求めていつの時代、どこの社会にもある親子の葛藤でもある。思い切り笑いホロリとさせられた後に、しみじみとなつかしい。

 ダミアン・オドネル監督。96分。英国映画。(鈴)

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