人気の料理教室、ニンニク、コチュジャン常備

朝鮮の味、日本の食卓へ


朝鮮料理には「母の手のぬくもり」
があると語る張仙玉先生(写真中央)


おいしくてヘルシー

 「人気の朝鮮料理を学ぼう」を合い言葉に日本の主婦たちが7日、埼玉県浦和市の東京電力浦和営業所の調理実習室で、朝鮮の家庭料理にチャレンジした。

 この日の講師は張仙玉・埼玉朝鮮幼稚園園長(57)。受講生らは新聞やTV、市の広報紙を通じて応募してきた38人の主婦たち。主催した食生活カウンセラーの会の堀けいさんは「毎月、色んな料理教室を催しているが、応募者は20人前後。今回60人もの人が応募してきたので、20人程を断わらざるを得なかった。大変なお叱りを受けたが、改めて朝鮮料理の人気の高さに驚いた」と語った。

 張先生は料理の実習の前に、朝鮮の食文化について分かりやすく語った。

 「食は本来、人間の心と体を作るもの。朝鮮民族は衣食住の中でも、とりわけ食を大切にしてきた。人々の和を大事にし、食をおう盛に取る生活文化がそこにある」「法事(チェサ)儀式を大切な年間行事として、長老の家に親戚中が集まり、料理作りや会食を楽しむ風習がある」「食卓は大皿を皆で囲み、和気あいあいと食べる。これは深い絆で結ばれた人間関係に起因しており、和を尊ぶ文化に根ざす」……。

 この日主婦たちが習ったのは、ピビンバ、チヂミ、即席キムチ、大根キムチ。まず、先生が料理を手際良く作って見せた。朝鮮料理には野菜が豊富に使われること、おいしさの決め手である調味料(唐辛子、ニンニク、すりごま、ゴマ油)は、美容と健康に優れた効能がある、などと説明するとニッコリうなずく主婦の姿も。茹でて、焼いて、炒めたりするうちに、辺りに何ともいえない香ばしい匂いが漂ってきた。

 受講生の、与野市から来た岡崎悦子さん(58)は、「家の台所にニンニク、コチュジャンを常備している。家族もチゲや焼肉、チヂミが大好きで、しょっちゅう作っている」と張先生の話に耳を傾けていた。

 夫の赴任先のドイツから帰ったばかりの栄養士・栗原美和さんは「日本に久しぶりに帰ってきて驚いたのは、情報が多すぎて、家族の胃袋を預かる主婦が、食に関する正しい情報を得られず、返ってそれに振り回されていることだ。伝統や文化を大事にして、豊かな食生活を守り続けている在日朝鮮人のみなさんに学びたい」と語っていた。

 先生の話の後はいよいよ実習。羽生市からきた阿久津美佐子さん(32)は新婚ホヤホヤの主婦。「辛いものの大好きな私がちょっと困るのは、夫が辛いものが苦手ということ。この際、しっかり習って、夫の舌を改造しなくては」と張り切ってピビンバの具の準備に取りかかった。久喜市から来た佐藤佐佳さん(61)は「朝鮮料理はとにかくおいしくて飽きない味。にんにく、とうがらし、野菜、肉、野菜をふんだんに使うからバランスもいい」とチヂミを焼きながらの慣れた手つきで語った。浦和の中野フミ子さんは、20、23歳の2人の男の子を焼肉とサムチュで育てたと自負するほどの「通」。この際、料理のレパートリーを広げたいと、この日の参加となった。

 作り終わると、みんなで賑やかな食事が始まった。ピビンバの具の1つ、大豆もやしのゆで汁から作ったスープまで用意された。「朝鮮料理には無駄なものは何1つありません」という先生の言葉に一同納得。この場で初めて出会った主婦たちは舌つづみを打ちながらも、「唐辛子はどこがおいしいの」「浦和駅前の○○店よ」「コチュジャンはあの店よ」と情報交換も怠りない。さすが、主婦の知恵。家族の食を預かる者同士の親しみが食卓を和ませた。(朴日粉記者)

辛いものブーム

子供の心つかんだピビンバ

 日本の子供たちが大好きなメニューのベスト3はどの調査を見てもこれまでは@焼肉AハンバーグBカレーライスとほぼ決まっていた。その不動の順位に割り込みしそうな勢いで人気急上昇しているのが、「ピビンバ」。食品メーカーのミツカンが、東京近郊の20〜50代の既婚女性に聞いた「アジア料理に関するアンケート」の結果だ。例えば、ピビンバを91年から学校給食に取り入れてきた兵庫県西宮市の食べ残し調査では、ホウレンソウとモヤシのゴマあえが10.8%に対し、ピビンバはわずか3.5%(昨年)。同じような食材でありながら、ピビンバの方が残る割合が格段に低く、野菜嫌い解消にも一役買っていることを示す数字である。

 さらに代表的なファミリーレストラン、デニーズ(538店)では、1月17日に登場したばかりの新メニュー・朝鮮料理タッカルビがたちまち人気第1位のヒット商品に踊り出た。第7位にはカルビクッパも入っている。同社の企画室広報の大江清彦氏(40)によれば、こうした朝鮮料理人気の背景を「女性からの支持が高い」「辛いものブーム」「おいしくてヘルシー」と分析する。日本の台所に朝鮮の味が幅広く浸透したことや学校給食の中にも登場したことも人気の一因だと言う。

 「何といっても、日本の文化や味のルーツは朝鮮であり、親しみもある。デニーズのクッパはキムチなども韓国の発酵した本物のキムチを取り入れて、奥の深い味をだしています。気候風土、水、空気…その本物の中で生まれたものには、やはりかないません」と大江さん。

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事