取材ノート

「帰化」迫らない環境を


 ちょうど1年前、就職問題で日本の企業の国籍に対する認識や、そこで働く在日同胞を取材したことがある。朝鮮大学校出身者もいれば、高校まで朝鮮学校に通いその後、日本の大学へ進んだ人、海外に留学経験のある人など、色々なケースをできるだけ記事に盛り込んだ。

 本紙のホームページでその記事を読んだ京都在住のある同胞から、数日前、メールが送られてきた。

 大学卒業を前に、就職問題で、国籍変更を迫られているが、記事に出ていた日本企業に勤めている同胞たちが、朝鮮表示なのかを知りたいという内容だった。

 聞けば、国籍変更を迫っている相手は、強要していると言うより、本人のためを思えばこその「善意」の助言だというのだ。

 彼に、取材対象者は全て本名を名乗り、朝鮮表示だと告げ、あわせて企業側の多くもアンケート調査で、社員採用にあたっては今後、国際感覚と語学力を重要視していくとの答えを出していると伝えた。

 その後、「国籍を変えず、がんばってみる」という返事が届いた。

 こういう場合、本人がしっかりとしたアイデンティティーを持つことが重要で、きっと就職先でも重要になると思う。

 問題なのは、「善意」の助言だ。

 今、日本国会では特別永住者の日本国籍取得を簡単にするための国籍法改正の動きが活発化している。許可制から届け出制にして、帰化行政を簡素化する、などだ。

 与党3党の同法案プロジェクトチームは、特別永住者を生んだ歴史的経緯について「政治的に配慮する必要がある」と判断してのことだ、という。

 「歴史的経緯を考慮した」特別永住者に対する扱いというなら、まず、植民地支配に対する過去の清算であり、朝鮮人として生きていくことのできる日本社会の環境整備にこそ努めるべきだ。 (金美嶺記者)

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事