地名考/故郷の自然と伝統文化

ソウル−H京畿道の民謡

「ヤンサンド」と「こくびき打令」

司空 俊


景福宮勤政殿(1903年)


景福宮(1890年)


 「陽山道」(ヤンサンド)は、古くから歌われている民謡である。その中の何節かを紹介しよう。

 エヘ―イェ 蒼浦畑(チャンポばたけ=広い池という意味)に錦鯉が泳ぐ/こっちにピカ、あっちにピカ、よく泳ぐ/(くり返し)エラ 放せ、放せない/

 エヘ―イェ 川辺に住めば、何をする/魚を釣り 生きていく…

 エヘ―イェ 岩の上に リスが走り/青き水、川岸に錦の亀が這う…

 エヘ―イェ 仲秋名月(ちゅうしゅうめいげつ) 明るい月よ/懐かしき人 何処に おまえは知る

 「陽山道」の源については、もともと「香山道」であったという説がある。朝鮮語で香山をヒャンサンというが、これが陽山(ヤンサン)になまって呼ばれたという。また、景福宮を建立(こんりゅう)した時、梁(はり)に灰を塗ったことから(これを梁上塗灰〔ヤンサントフェ〕という)、梁上(ヤンサン)が陽山になったという説もある。ほかに、新羅、李朝時代に歌われた「陽山道」から由来するという説もある。

 歌は新しいのも良いし、古いものも良い。中でも幅広い年齢層が歌える共通の歌が良いと思う。老若共通の歌を持たない民族は悲しい民族だと、思っている。

 朝鮮には共に歌える民謡があるが、「こくびき打令(タリョン)」もその一つだ。これは立唱である。

 /正月になれば15日、厄が去り/2月になれば寒食、春秋節が去り/3月になれば 三辰(さんじん=3月3日のこと)、ツバメの子が飛び/4月になれば8日、観灯がつき/5月になれば端午、ブランコの綱が張る…という歌である。

 「アリランタリョン」の歌もよく知られている。京畿道アリランは時代を風刺しているともいえよう。  …李氏の四寸(従兄弟)よりも/閔(みん)の八寸になろう/アリラン峠に停留場をつくり/汽車の到着のみを待つ/畑はつぶされ、新作路(道路)になり/家はつぶされ、駅になったよ/…

 口のきける男は裁判所に送り/力のある男は共同山にゆく/子を生むことのできる女は春を売り/モッコを担ぐことのできる男は賦役にゆく/夜が明けた、/狂人共も夢から醒める/私を捨ててゆく人は/十里も行かずに足が痛むと、侵略者を揶揄(やゆ)した内容が多い。(サゴン・ジュン、朝鮮大学校教員)

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