それぞれの四季

点心のこと

朴(王に旬)愛 (パ・スネ)


 点心、もしくは點心(てんしん)というと日本では餃子やシュウマイ、大根餅など、中華のちょっとした軽い食事やおやつなどを思い浮かべる。ところが朝鮮語の漢字語として読むと「チョムシム」。昼食のことである。毎日のように使う言葉だ。だが朝鮮語の「チョムシム」=昼食という単語が、「点心」というよく知っている漢字と結びつかないらしい。朝鮮漢文の講義の際、現代朝鮮語の中にどれだけの漢字が潜んでいるかを説明する時必ず例にあげる。学生達はハッとして、口々にただ単純に朝鮮語だと思っていた漢字語を再検討し始める。あまりにも「漢文は難しい」といった固定観念があるので「日常使っている朝鮮語の中に漢字の熟語がこんなにある」ことに気づいてもらうための手段、いや、ものの見方を少しだけ変えてもらうための点心うんぬんである。

 私自身、10数年前朝鮮の古典を読むために漢文を始めたとき、漢字の洪水に目から血がでるなどと騒いでいたが、その漢文との関わりによって現代朝鮮語をより深く捉えられるようになった。だがつい最近まで、漢文は難解だと人が思っている、同学の士など求めるべくもないと頑なに思い込みひとり荒野をさまよう心持ちでいた。しかし語学を専門とされる方が興味を持たれ、一昨年から17世紀の漢文小説「雲英傳」の原文を共に読み解いている最中である。偶然は重なるもので、演劇を専攻する教員になったばかりの若い先生も「漢文を」ということで、毎週課題を差し上げている次第だ。「難しい漢文」の呪縛にとらわれていたのは自分だったのかも知れない。(朝鮮古典文学専攻)

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