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チャールズ・チャップリンの映画「独裁者」が久しぶりにテレビで放映された。ヒトラーのナチスドイツ、そして2度にわたる世界大戦を痛烈な風刺で批判した。映画が作られたのは1940年だが、今見てもちっとも色あせて見えない。チャップリンの主張が、今の時代感覚にぴたりと当てはまるからかもしれない
▼映画のクライマックス。ヒトラー(映画ではヒンケル)にそっくりということで、総統に間違われ演説台に立たされる主人公のユダヤ人理髪師。聴衆を前に彼は、「ユダヤ人も、異教徒も、黒人も白人もみんが助け合って生きていくべきだ」と静かに、だが情熱を込めて語る。チャップリンはこの映画で言いたかったことを、この最後の長い演説にぶつけた ▼映画が作られた40年と言えば、その前年にドイツのポーランド侵攻で第2次世界大戦が始まり、ナチスによるユダヤ人迫害が日増しに強まっていった時期だ。ヒトラーを批判すること自体、ある意味命がけであった ▼翻って現代社会を見ると、ニューヨークでのテロ事件以降、報復が報復を呼び、憎しみが憎しみを呼んでいる。チャップリンが映画で訴えたように、人間はお互いが幸せであらねばならないのに、憎しみ、悲しみ合う現状が続いている。来年こそは、みんなが幸せになれる世の中をと願う ▼それにしても、ユダヤ人は、ゲットーに押し込まれ、強制収容所に送られて殺された歴史を持つのに、なぜパレスチナ人に同じようなことをするのか。報復の連鎖?――と呼ぶにはあまりにも嘆かわしい現実だ。(聖) |