記者座談会−在日同胞社会2001年を振り替える(中)

生活・権利

民族性、新世代、生活奉仕 総聯19全大会で強調
地域で横のつながり広げ
福祉への取り組み定着

5月に結成された在日同胞福祉連絡会の第1回総会および交流イベントには、各地から250人が参加した(8月25日、長野) 神奈川では朝鮮学校に対する補助金増額を求める署名運動を行い知事あてに提出した(11月20日)

真の同胞大衆運動に

 A  今年は3年に1回の総聯全体大会の年だった。21世紀初の全体大会とあって注目されたが。

 B  5月に開いた第19回全体大会で総聯は、各階各層同胞のニーズと志向に即した同胞社会作りに励み、在日朝鮮人運動を真の同胞大衆運動にしていく決意を表明。◇民族性と同胞愛で結ばれた仲むつまじい同胞社会◇経済的に安定し、民族文化情緒にあふれた豊かな同胞社会◇日本と国際社会で堂々たる地位を占め、祖国と民族のために価値ある寄与のできる力ある同胞社会――という21世紀の同胞社会像を打ち出した。

 A  今後3年間、19期の具体的な活動方針は。

 B  柱は、@民族性固守A新世代との活動B同胞生活奉仕――などだ。

 C  @では民族教育のさらなる強化発展と非正規教育網の拡大を進める一方で言葉・文字・朝鮮の名前、民族の文化・伝統を守っていく社会的な運動を繰り広げる。地方参政権取得や今年突如浮上した国籍取得要件緩和などの同化促進の動きに引き続き反対する立場も明らかにした。

 A  国籍取得要件緩和の動きには、権利付与ではなく同化策だとして各界から強い憂慮の声があがっている。秋に表面化した公安調査庁の外国人登録原票不当入手事件を見ても、在日同胞を管理、弾圧の対象とみなす日本当局の本質に変化がないことは明らか。今後も注視すべき問題だ。

 C  Bでは、一昨年来、総聯支部を中心に各地に設けられている同胞生活相談綜合センターが今後も役割を担っていくだろう。

 B  6.15共同宣言の大きな結実、総聯同胞故郷訪問団事業は今年も4回、着実に実施された。来年も続けられる見込みだ。

国連委、差別是正勧告

 A  19全大会で示された課題の筆頭が民族性を守る問題だった。そこでもっとも重要な位置を占めるのが民族教育だが、日本政府は朝鮮学校に対する差別的処遇を続けている。

 B  しかし同胞たちは今年も地域で根強い運動を続け、都道府県や市区町村レベルで各種補助金制度の創設や増額を勝ち取った。とくに埼玉、兵庫などでのがんばりが目についた。

 C  埼玉では日本市民らによる「朝鮮学校を支える会」も結成された。結局、公開授業などさまざまな方法で幅広い支持を呼びかけ理解を広げていく過程が実質的な成果に結びついている。同様の支援団体は準備中も含めて各地に15以上あり、先日、9団体の代表による交流会も開かれた。

 A  兵庫の場合は、阪神・淡路大震災を契機に発足した「外国人学校協議会」の役割が大きいと言える。今年、東京でも中華学校や韓国学校、インターナショナルスクールとの交流が進んで初の合同絵画展が開かれたし、神奈川でも来年発足に向けて準備中だ。

 B  処遇改善運動では幅広い連帯と協力が必要だ。各地で急増しているブラジル人学校などとの連携も今後、模索すべきだろう。

 C  国際世論は私たちの運動を後押ししている。国連の人権差別撤廃委員会は3月、社会権規約委員会は8月、日本政府に対し、民族教育の権利を認め、朝鮮学校への差別を是正するよう求める内容でそれぞれ勧告した。国連機関がこのように勧告したのはこれで合計4回になるが、日本政府は相変わらずだ。

 B  しかし、日本国内でも硬直的な教育行政の見直しを求める声があがっている。先日も、政府の総合規制改革会議(議長=宮内義彦・オリックス会長)が11日、小泉首相に提出した答申でインターナショナルスクール卒業者の進学機会拡大を提言。これを受けて文部科学省は、朝鮮学校を含む外国人学校の卒業者が大検なしで大学受験できるかどうか来年度実施を目途に検討に入ったと報じられた(日本教育新聞14日付)。

 C  こうした動きをとらえて横の連携を強め、来年もたたかっていこう。

課題解決に全力を

 A  総聯コミュニティーの中で福祉問題への関心と実際的な取り組みがすっかり定着した印象があるが。

 C  背景にはここ数年、遅きに失した感はあるものの同胞社会で高齢化が無視できない問題になってきたことと、障害者とその家族が声をあげ始めたことがある。障害児を持つ家族の会も今年新たに4カ所で結成され、7団体となった。

 B  総聯も3年前の18全大会以降、組織的取り組みを本格化させた。今年5月、各地にある同胞高齢者・障害者とその家族の連絡会、支援団体を中心にした在日同胞福祉連絡会が結成されたが、事務局を担当して全面的にバックアップしている。連絡会が8月に長野で開いた第1回総会および交流イベントには、各地から250人が参加した。

 C  地域で同胞の福祉を担うため、各地の同胞生活相談綜合センターも引き続き模索を続けている。

 A  そのモデルとなるのが、1998年に開設された京都コリアン生活センター「エルファ」だろう。同胞高齢者に寄り添ったきめ細かい介護事業が評価され、10月には「2001年毎日介護賞」を受賞した。NPO法人認可取得や独自の人材育成など、事業を支えていくための方法論に長けている。

 B  6月、日本政府は初めてハンセン病患者に対する長年の強制隔離政策への反省と謝罪を表明し、元患者らの名誉回復と救済に取り組む姿勢を示した。同胞社会では、二重の差別を受けてきた在日同胞元患者の存在に関心が集まった。

 C  無年金に苦しむ同胞高齢者や障害者の存在もある。在日同胞の生活権利において未解決の問題がまだまだ多すぎる。すべての問題の根本には、過去を清算しないまま在日同胞への差別を続ける日本政府の不当な姿勢がある。中央の政治レベルから地域の生活レベルまで、全組織をあげてあらゆる面からさらなる取り組みを続けていかなくてはならないだろう。

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