グローバル新風

雁行と昇竜


 「雁行」という言葉がある。雁の群れが斜交になって飛ぶ様を語源にしており、その表現は物理的・概念的形状においてV字を指す時にしばしば使われる。

 最近では東アジアの経済関係を語るキーワードとして多用されている。

 「これまで東アジア諸国を雁の群れにたとえ、先頭を飛ぶ日本の後に、その成功モデルにならう各国が発展段階別に続くというイメージがあった」(経済産業省通商政策局・津上俊哉氏)

 たしかにこれまで東アジアでは、日本、NIES、ASEAN、中国という順で技術や投資が波及してきた。

 しかし近年、この関係に変化が生じている。

 その変化の軸は中国だ。

 12億という無尽蔵で低廉な労働力を武器に、世界で急速に「メイド・イン・チャイナ」のシェアを拡大。

 粗鋼、化学繊維や、カラーテレビ、エアコン、洗濯機、冷蔵庫等で世界1位の生産量を誇るなど、今や「世界の工場」へと急成長した。

 12億人はまた、「労働者」であり「消費者」でもある。

 このまま行けば中国は超巨大市場になり、それは外資にとってもおおいに魅力的である。最近は製造業だけでなくサービス業の進出も活発化、WTOの加盟でより過熱しそうな雰囲気だ。

 その突出した勢いは東アジアの「雁行型」パラダイムも一変させた。

 前出の津上氏も同発言で、「中国という巨鳥の出現でそれ(雁行型)が崩れた」と指摘する。

 雁行の後列から飛び出した巨大な鳥は、もしかすると天に昇る龍かもしれない。(李達英=朝・日輸出入商社pulgasari@yahoo.co.jp

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