記者座談会−在日同胞社会2001年を振り替える(上)
経済
関東、近畿で新信組設立へ
焼肉店キャンペーンなど迅速に対応
PCエキスポに初参加
「ハナ信用組合設立記者会見」(10月)
今年は在日同胞にとって、かつてない激動の年となった。同胞社会ではどのような出来事があったのか。担当記者が経済、生活・権利、在日社会の3分野に分けて話し合った。今回は経済。
相互扶助と地域密着 A 今年、同胞たちの景況観はますます悪化した。 C 在日本朝鮮人商工連合会(商工連)が4月と7月の2度にわたって景況観測を調査したが、いずれも悪化傾向にあるとの答えが多数を占めた。 A 厳しい状況だが、関東、近畿における新しい信用組合設立の動きが注目された。 B まず、昨年末の朝銀近畿信用組合の破たんにともない、今年3月から近畿の2府4県で新しい民族金融機関設立に向けて準備が進められた。 C 兵庫の「共和信用組合(仮称)」、大阪・和歌山・奈良の「朝和信用組合(仮称)」、京都・滋賀の「京滋信用組合(仮称)」だね。8月9日までに設立認可を受けるための予備審査を近畿財務局に申請した。 B 3ブロックの発起人、準備委員らは「相互扶助と地域密着の原点に戻り、健全で透明性のある新たな民族金融機関を設立する」(共和信用組合発起人代表の李慶鎬氏)との思いで、文字どおり昼夜を分かたず出資金を集めるために奔走した。 C 厳しい批判を受けながらも、各地域の説明会に赴き、同胞ら一人一人に説明したという。 A 関東では「ハナ信用組合」の設立準備が進められている。 B 東京、千葉、長野、新潟、神奈川、埼玉、茨城、群馬、栃木の1都8県が事業エリアで、来年3月の事業開始が目標。すでにシンボルマークとイメージキャラクターの応募も始まった。 C 中小零細企業が大半を占める同胞企業にとっては、効率化、選別化を追求する日本の金融機関との取引は難しい。民族金融機関は必ず設立されるべきだ。 A 11月26日には朝銀北東、中部、西の3信組が2年余の事業譲受譲渡を完了し、新たなスタートを切った。 C 暗い話が続いた中で光が見えてきた感じだ。1世たちが発展させてきた民族金融機関を次世代が責任を持って守り、発展させていくべきだろう。 業者間のつながりを A 今年後半、焼肉業界を襲ったのがBSE(狂牛病)騒動だ。売り上げの減少など大きな影響が出た。「テロにあったようなもの」と嘆く業者もいたほどだ。「民族産業」と言われるだけに、多くの同胞業者が風評被害にあった。 B 売り上げは平均して5〜7割減、中には9割減ったところもあるという。そういった中で、各地の商工会ではセミナーや焼肉祭り、国や地方自治体による緊急融資制度の説明会を開くなど、積極的な対策を講じてきた。 C 愛媛では11月16〜18日の3日間、計10の焼肉店で全品3割引の共同キャンペーンを行った。初日の金曜日は若者客、そして土、日はファミリー客でいっぱい。店の外に行列ができるほどの大盛況だったと聞く。お昼から客が途切れず、午後8時には全品がすべて売り切れたそうだ。 B 各地のセミナーでは、「焼肉だけでなくほかの朝鮮料理もメニューに取り入れては」「基本を忠実に守り、高度な味付け、きれいな盛り付けを心がけるべき」など、活発な意見が出された。 A 岡山、神奈川などでは飲食業者協議会が先頭に立って、業者間の意見交換を行ってきた。 C こういう時こそ、同胞業者間の横のつながりを大切にすべきだという声が各地で聞かれた。 A そういった意味で、毎年好評を博している朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座は、業者間の交流を深め合う好機になっただろう。 C 在日コリアンが経営する焼肉店を紹介するサイト「焼肉天国.com」では、全国の焼肉店で5000円以上食事をした人を対象に、総額100万円のキャッシュバックキャンペーンを行っているが、これなども焼肉店の応援につながるのではないか。 在日企業と技術提携 A IT(情報技術)の分野では何か動きがあったか。 B 在日同胞企業と南朝鮮企業の合弁会社、ユニコテックが南朝鮮のユニバーサル情報通信、日本のソフト・トップメーカーのロゴヴィスタと、多言語翻訳などをインターネットで提供する業務提携を6月に結んだ。ユニコテックの梁泳富社長は記者会見で、「北南朝鮮のソフトが一つのパッケージで、販売力のある日本企業との提携により市場に出るのは初めて」とその意義を語っていた。 A 言葉の壁がどんどん破られているわけだ。ところで、朝鮮のIT技術者代表団が、9月に幕張メッセで開かれた「ワールドPCエキスポ」に参加したのも印象に残った。 C デジコソフトの初出展に際して来日した。この会社は、科学院など朝鮮のIT研究機関と提携してソフトウェアの共同開発を手がけている。今回展示したのは、画像保護などのセキュリティー関連ソフト、音声認識、朝・日、日朝翻訳などのコミュニケーション支援ソフトなど。来日した朝鮮の代表は、デジコのブースで説明にもあたった。 A 反響は。 C 初日と最終日に取材したが、大勢の人がブースに立ち寄っていた。「自動翻訳の速さには驚いた。独創性で勝負すれば、十分、市場にも参入できる」などと感想を述べる来場者もいた。 B 代表団団長の金基哲・朝鮮コンピューターセンター副技師長は、「こういった催しにどんどん参加して世界のすう勢に敏感に対応していきたい」と語っており、今後、朝鮮でITへの関心はますます高まるだろう。 A その日本の窓口がデジコソフトというわけだ。 |