春・夏・秋・冬

 「国内で作られた可能性が強まっている」(フライシャー米大統領報道官)。何のことかと言えば、米国での一連の事件で使われた炭疽(たんそ)菌の話だ。同時多発テロ直後に起きた事件だったために、すわ「イスラム原理主義の仕業か」との憶測が飛びかったが、ここへ来て様相が変わってきている

▼実は米国でテロが起きるちょうど1週間前の4日、米紙ニューヨークタイムスは米国防総省が炭疽菌の開発を行っているとの記事を掲載した。記事によると、ロシアの生物兵器に対抗するのが目的だったという。ロシアは旧ソ連が研究開発していた炭疽菌を、生物兵器として開発し、武器の国際ブラックマーケットに流そうとしていた。そのため、生物兵器の攻撃を防ぐ「防御策」として開発を再開した。いわゆる「クリアビジョン計画」である

▼国防総省が50〜60年代に炭疽菌の研究開発を行っていたのは周知の事実だ。69年に生物兵器開発の中止を宣言したが、前述の理由で再び開発を始めていた

▼今回の事件で使われた炭疽菌は「エームズ株」と呼ばれる種だそうだ。80年にアイオワ州エームズの研究施設で作られ、それが米陸軍研究所などに供給された。米紙ワシントン・ポストは、これと事件の菌が遺伝子レベルの分析で一致することが分かったと伝えている。FBIも、米陸軍施設から菌を譲り受けていたCIAも含め米政府機関が出所ではないかとの見方を強めている

▼もちろん、最終的に犯人がつかまらない限り、真相はわからない。だが、何事も一方的な見方だけは避けた方が懸命だ。(聖)

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