焼肉激戦区−繁盛店
安く新鮮、安全性を全面に
名古屋・錦、炭火焼肉「大成園」
「選ばれた店」に
名古屋市中区錦2丁目の繊維問屋街の一角にある炭火焼肉「大成園」錦店。この問屋街は、北側の丸の内のオフィス街から南側の繁華街、栄までの通り道に至り、アフター5から栄に向かうサラリーマンやOLをターゲットにした飲食店が近年、急増している。マスコミでも頻繁に取り上げられている地域だ。 同店もその流れに合わせて今年10月9日にオープン。BSE(狂牛病)問題の風評被害により厳しい経営を強いられている店がほとんどだが、開店から約2カ月を迎えた同店では、オープンイベントによる集客後、着実にリピーターを増やしている。すでに10回以上来店している人もいるほどだ。 では、どのようなアイデアを駆使しているのか。オーナーシェフの金昌一さん(38)は朝鮮大学校卒業後、オモニが30年前に始めた北区の住宅街にある本店で9年間修行を積んだ。そして6年前に代を継ぎ、支店の出店を狙ってきた。金オーナにとって今回の出店は、さまざまな形態の焼肉店が登場するなかで、独自のカラーを追求していくための挑戦と言える。 まずはオープンから見てみよう。オープンから3日間、飲食代の半額金券を来店者に発行した。それをアピールするために、オープン前にオフィス街の各企業にポスティング広告を配布し、駅周辺ではスタッフ全員でチラシを配った。 愛知県内ではトップクラスの建築デザイナーに店の設計を頼んだため、彼が手がけた店として飲食雑誌にも紹介された。エレガントな趣の店内(テーブル席15、掘りごたつ席5の約80人収容)は、大人が落ち着いて食事のできる場所だ。 また肉の安全性をアピールするため店の入口に、エサは麦芽を使い、肉骨粉は一切与えていない安全な黒毛和牛のみを取り扱っていると書いた広告文を張った。 そしてオープン。順調なスタートを切り、午後5時の開店後、7時半の夕食時には多くの客でにぎわい、11時半頃に一段落するというペースを維持している。売り上げは最低目標の7割を達成している。 現在、同店は半径1キロ以内に60を超える同業店の中から「選ばれた店」としてのポジションを確保しつつある。その要因について金さんは、「高級店をうたった他店より価格を低く設定しつつも、他店に劣らない良い品を提供しているからでは」と強調する。 直接、 工場で検品 肉は飛騨牛を使用している。金さん自らが直接工場に足を運び、枝肉を検品しよりよい肉を購入している。取り引きは数社の業者と行っている。同じ肉でも店によって卸値が異なる場合があり、交渉次第で肉を安く卸してもらうことができるからだ。原価率は35〜38%を保っている。価格はカルビ880円、上カルビが1650円。サラリーマンやOLだけでなく、肉の原価などについて詳しい飲食店の経営者たちも多数来店するほど、「良心的な商売」をしている。 肉の価格を抑えられるのは、店の経営全般でコストダウンを図っているからだ。マットやオシボリなども交渉して価格を抑えるようにしている。 年4回のイベント構想 メニューの種類は焼肉(塩、たれ)、刺身、漬物、サラダ、スープ、食事、デザート、アルコール(ワイン、地酒など)で、海鮮などはなくシンプルに構成されている。「焼肉そのものを追求し、その王道を歩みたい」(金オーナー)からだ。なかでも塩焼(ホルモン、ミノ、タン、地鶏、上カルビ)を積極的にアピールしているが、それは厳選して購入した肉本来のうま味を味わってもらうためだ。 シンプルなメニューだが、内容を変えないわけではない。「年に1度はメニューを作り直す予定。新メニューも開発するが、品数は増やさず、顧客のニーズに十分に応えられるものにしようと思っている」。 また、4半期に1回、イベントを組む構想もある。店側がアピールしたい自信商品をサービスする。日頃の感謝の意を込めて常連客に還元し、人気商品として位置づけるためだ。 こうした努力が実を結び「おいしいお店」「良心的なお店」という評判が口コミで広がり、固定客の確保につながった。厳しい状況を乗り切ろうとする金オーナーの挑戦はまだまだ続く。(羅基哲記者) |