それぞれの四季

3年生の引退

姜龍玉


 延長までもつれ込んだ広島県大会準決勝戦で、朝高サッカー部は勝利を制することはできなかったが、持ち前の粘りで見応えあるゲームを展開した。

 走りつづけたグラウンドに崩れる3年生部員たちにとって高校生活最後の試合となったその日、彼らの涙に誘われ鼻をすするオモニたちの後ろで私もまた、ぬれたインクのように胸に寂しさが滲むのをこらえていた。3年生の引退と共にそのオモニたちを見送る時期がきたからである。

 寄宿生が多数を占めるサッカー部は、試合になると県外から高速道路の遠路を縫って父母が応援に駆けつける。そのグラウンドの片隅で私は多くのオモニとめぐりあい、思いを共有してきた。

 いつも接戦にハラハラしながら精一杯声援を送り、懸命な子供たちのプレーに一喜一憂してきた。家庭や仕事、地域での忙しさの中、何よりも子供がサッカーに打ちこめるよう陰ながら配慮し、大きなケガのないことを祈りながら神経をすり減らしてきた。

 グラウンドで泥まみれになって夢を追いかける部員たちをどの子もわが子のように温かく見守ってきたオモニたちは遠征や諸々の経済的負担もしかり、学校の長い休みにも子供が帰宅しないことを黙って甘受した。

 5人の孫の活躍を楽しみに岡山から長きにわたって通いつづけたハルモニも末孫の卒業を迎える。そのハルモニが時々抱えるように持ってきてくれたサンチュや青とうがらしは、時にやさしく時にピリッと監督である夫を励ましてくれた。私は人生の先輩たちから大切なものを少しずつ汲み取っている。(主婦)

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