演劇−アラン・サムセ
「月唄−蘇れ!  民族戦線ピビンバMAX」

「私は何者」果てしない旅


 喜劇でもあり、悲劇でもあり、面白いのか、面白くないのか…。在日朝鮮人劇団「アラン・サムセ」の2001年公演「月唄―蘇れ!  民族戦線ピビンバMAX」。

 在日朝鮮人が抱える諸問題。教育問題、世代交代、朝鮮語と日本語を併用する「総聯語」…。もうこれだけでもテーマは複雑。なのにここにインディージョーンズや古畑任三郎、今話題の陰陽師まで加わると賑やかを通り越して、「けたたましい」雰囲気を醸し出す。

 演出金正浩、脚本金元培の演劇スタイルに変わりはない。動と静、悪人か善人か、出演者たちは演じわけようとするが、まだそこまでは至らない。

 怪しい月山の住民たち。いかがわしい下界から桃源郷を固守する妖怪役を姜和石が熱演した。何やら平家の落人風の月山、そこに探りを入れる忍者風の公安警察…。幾重ものエピソードが語られるがもう1つ消化仕切れない。つっこみ過ぎて笑いが客席から弾ける。若い男性団員の体のキレもよく、テンポの早いセリフは新しい収穫。

 重いテーマに果敢に挑戦する姿勢はいい。組織と個、あるいは民族と個人の関係。どの時代にも新と旧のせめぎあいがあり、世代間の相剋は続くものだから。常に「私は何もの」と問い続ける旅は果てしなく、人は悩み、生きて行くのだ。

 劇中歌「私はウリ」の一節に「父と母/ 兄弟姉妹そして友/愛しい皆がくれた力と勇気ここにあるから/私はウリ」とある。おそらく描きたかったのは、「私はウリ」ということ。もう少し脚本の整理が必要だ。

 エピローグのピビンバMAXの歌って踊るシーンは面白い。朝鮮学校初級部や幼稚園での巡回公演など提案したい。(粉)

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事