結成1周年を迎える「ヒロシマムジゲ会」

広島初中高  ボランティア、芸術公演


 同胞障害者とその家族をつなぐ「ヒロシマムジゲ会」(李進会長)が12月に結成1周年を迎える。会員にアボジや日本学校教員が多い点は他地域に見られない特徴だ。同会は今まで3回にわたって交流会を開催するなど、障害者とともに生きる同胞社会の実現を目標に据え、努力を重ねてきた。

3度の交流会

 現在、同会は同胞障害者25家族を把握しているが、その中で会に顔を出すメンバーは15家族ほど。年齢は学齢期から30代までで、障害の症状はさまざまだ。

 広島では朝・日の教育関係者が1人の同胞障害者の民族教育権を保障するため、十数年間運動を進めてきた経緯がある。その過程で同胞障害者のネットワークを作る必要性は何度となく提起されてきた。総聯が18全大会で福祉問題に取り組む姿勢を明確に示したことが後押しし、昨年12月、結成を兼ねた第1回目の交流会を開くことになったのだ。

 広島初中高で行われた第1回目の交流会には40余人が参加。授業参観や餅つき、鍋作りが行われ、参加者は全校生徒とともに鍋料理を食べた。続けて行われた懇談会では今後、会をどのような形で運営し、また「ムジゲに何ができるのか」について意見が交わされた。

 「同胞同士悩みや困っていることを相談したり、情報を交換する場になれば…」(ある参加者)。

 6月に行われた2度目の交流会も広島初中高で行われ、1回目と同様、同校の教職員と生徒らが協力した。参加者らは、広島初中高の生徒が披露した楽器の演奏や朝鮮舞踊を楽しく鑑賞した。

 10月13日に行われた3度目の交流会は、広島市東部の瀬の川で川遊び。当日は60人が参加し、ハゼの天ぷらに舌つづみをうった。

十数年来

 「ヒロシマムジゲ会」のメンバーには、日本学校教員やアボジらが多い。これはほかの地域ではあまり見られない特徴で、知的障害を持つ李鎬烈さん(19、大竹市在住)の民族教育権を保障する運動が生み出した財産とも言える。

 朝・日の教育関係者は、李さんが広島朝鮮第1初級学校(当時)に通っていた十数年前から行政に対する交渉を重ねてきた。その結果、4年前に広島県では同胞障害者の民族教育を保障する「併習」制度が実現。広島朝高と日本の養護学校の両方に籍を置くという例のないこの制度によって、李さんは念願の朝高に通うことができるようになった。メンバーのアボジらや日本人教員らは運動をともにたたかってきた有志たちだ。

 李さんは今春、朝高を卒業。現在も同校中級部には「併習」制度を利用して学ぶ障害者がいる。

 高2、3と李鎬烈さんを担任した広島初中高の呂東珍教員(36)は、日本人教員らが協力を寄せる「ヒロシマムジゲ会」は多くの可能性を持っていると話す。今後、同胞障害者の民族教育権をより確立させ、卒業後の就職先や生涯施設を保障するためには日本市民の協力が不可欠だからだ。

「無関心」の解消を

 中四国地方には6月に結成された下関ムジゲ会があるが、「ヒロシマムジゲ会」では近隣のムジゲ会同士交流しようという声もあがっている。事務局長の李誠さん(廿日市高校職員)が在日同胞福祉連絡会の副会長も兼ねるなど、全国の仲間とも連携を深めている。

 同胞障害者と共生する同胞社会を築くためには偏見を取り除き、支援の輪を広げることが課題だが、広島にムジゲ会が結成されたことでボランティアの輪も広がってきた。広島初中高の生徒はとくに積極的だ。しかし、同胞社会全体を見ると関心が薄く、これが最大の課題だと事務局の朴順鎬さん(総聯本部副委員長)は指摘する。

 ムジゲ会では会報も出しているが、今後は同胞社会の関心をさらに喚起するため、ホームページを設ける予定だ。事務局連絡先TEL  082・263・5311(総聯本部内)、TEL  0829・32・1125(廿日市高校内  李誠)

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