同胞経営者をサポート

ビジネススクール2001  「今こそ事業展開編」

各界スペシャリストが講義


 「同胞経営者のビジネスをサポートする!」――、ビジネススクール2001が10月23日から11月20日にわたって開催された。東京都商工会、東京青商会の共催によるスクールは今年で2回目。同胞企業を取り巻く環境の変化に対応したビジネスチャンスの拡大と事業のいっそうの発展へ、「今こそ事業展開」編と題して5回にわたって講義が行われた。各業界、専門分野で活躍するスペシャリストの講義に、参加者らは真剣に耳を傾けていた。

叙々苑ブランド構築の軌跡

朴泰道社長

 「叙々苑ブランド構築の軌跡」(10月23日)と題して講義した朴泰道社長は、15歳で料理人として焼肉業界に入った経験から、料理人としてのアドバイスに重点を置いた。

 「叙々苑は1976年、東京・六本木にオープンした。ここに店を出そうと思ったのは、どこで売っても肉の仕入れ値は同じなので、良い肉を売るなら少しでも高く売れるところで商売しようと思ったからだ。ターゲットは女性客だった。良い肉を出し、他店との差別化を図るため50円安くした」と開店当初のコンセプトを語った。

 叙々苑が何より力をいれたのは料理、つまり味だ。「六本木の叙々苑から上カルビ、タン塩が生まれた。上カルビは、女性客の要望を取り入れ、脂身をカットして出したのが始まり。肉を並べて出すようになったのもそれからだ。お客様に対する心づかい=お客様に対する愛情から新商品が生まれた」と強調した。叙々苑では今でも日々新メニューの開発が続いている。

 多店舗展開については、「2店舗目の場合、1店舗目が繁盛しお客様があふれるようになってからの方が好ましい。お客様がその店の味を認めたという意味があるからだ」とアドバイスした。

長期不況の特徴と需要対策

呉民学・朝大講師

 「長期不況の特徴と需要対策」(10月30日)と題して講義したのは朝鮮大学校政経学部講師の呉民学氏。

 長期不況下で消費が伸びないのは、「消費者が消費を抑えようとしている」からだと指摘。その要因は、「不況が続くのを念頭に節約したり、貯金しているのではないか」と分析した。

 日本経済研究センターの「長期経済予測」を参考に、需要は全般的に減り続けるだろうと展望しながら、その対策として、@今あるシェアの中での拡大A新規需要分野の開拓――の2点をあげた。

 そのうえで、新規需要分野で中長期的に有望視されるものとして、IT(情報技術)市場とシルバー市場をあげ、次のように指摘した。

 IT市場は現在、140兆円市場にまで拡大したが、今後さらに拡大するだろう。ここで参考にしてもらいたいのはコンテンツの問題。コンテンツとは、文字や映像、音楽などの情報素材を加工して製作し、ユーザーに届けられる情報商品のこと。パチンコのリーチアクションもその一つ。ホール経営者の場合、例えば分業化してこうしたコンテンツの開発にも力をいれ、将来的には台の製造へと企業を拡大することも可能だ。焼肉業にも朝鮮料理というコンテンツがある。朴泰道社長が料理の味を研究しろというのもこうした意味だ。在日の場合、「朝鮮」というコンテンツをあらゆる分野で生かせる可能性を秘めている。

パチンコホールにおけるITからITへ

金周成・クープ代表

 株式会社クープ代表取締役の金周成氏は、「パチンコホールにおけるIT(インフォメーションテクノロジー)からIT(インテリジェントテクノロジー)への発展」(11月6日)と題して、ブロードバンド時代のパチンコホールにおけるIT戦略について語った。

 「パチンコ業界はウリトンポの基幹産業」と指摘した金氏はまず、ホールにおける従来の情報技術について、@遊技台からの遊技情報A玉貸機からの売上情報Bその他(ジェットカウンター、ナンバーランプ、データ端末など)――が情報機器の集合体であると述べた。そして、コンピューター技術の進歩により、情報技術から知的技術へと発展している状況や統計学の適用について言及。「学生時代に悩んだ偏差値を思い起こしてほしい」と例を上げながら、「遊技機をそれぞれ1人の生徒として考えた場合、各機種は各クラス、各島(1種類の機種が集まっている場所)は各班と言える。また、アウト、セーフ、差玉、売上、特賞回数などは各教科と考えられる」と指摘。これらのデータを使って、各機種の稼動状況を客観的に偏差値で表わし活用できることを紹介した。

 その他、@即時・速報性の情報A蓄積・分析性の情報B情報の公開・共有C新しい設備機器の導入――について、詳細に説明した。

人事、教育を中心の人事労務管理

韓鐘哲・社労士

 社会保険労務士、行政書士など幅広く活躍する韓鐘哲氏は、「人事、教育を中心とする人事労務管理」(11月15日)と題して講演。@人事労務管理の意義A人事労務管理が必要な理由B要員計画C能力開発、人事評価、賃金管理――について解説した。

 韓氏は、個人事業から会社組織に成長し、事業主が同胞でも従業員には同胞以外に日本人もいるなど、同胞企業を取り巻く環境が変化している今だからこそ、人事労務管理が必要だと強調。事業拡大のための体制づくりをするうえで重要なのは人、物、金、情報と言われるが、「その中で一番重要なのが人」だと韓氏。人に対する評価は、働いている側からすればお金であり、職場では円滑な人間関係、職場環境の構築が求められると指摘した。

 要員計画立案にあたっては、適正要員の算定が必要だとして、利益×労働分配率÷1人当りの人件費=適正要員数の公式について説明した。また、人員の募集・採用に関しては、リクルート情報を扱った専門情報誌は若い人がよく見るので、その層を要求する場合はメリットがあるが、掲載にお金がかかる点はデメリットだと指摘。ハローワーク(職業安定所)を活用すれば、年齢層は高いが経験者をみつけることができるなどと述べた。

企業の発展と経営者の心構え

李奉国・都商工会会長

 スクール最後の講師は大都製作所会長の李奉国・東京商工会会長。「企業の発展と経営者の心構え」(11月20日)と題して、主に企業家としての体験談を語った。商売では目的を持つことが大切だという李会長。「事業目的をある程度決めておけば、自分がどれだけ努力したかを判断できる」という。

 次に、「商売の条件を整理する必要がある」と強調しながら、初期条件として資金、備品の準備具合、人材などで余裕があるほど成功するといわれるので、欠陥があればそれを補う手当てをしておくことが大事だと次のように指摘した。

 「初期条件で商売を始めた後、環境条件によって左右される時がある。たとえば、初期条件を整えて焼肉屋を始めたものの、『BSE(狂牛病)』騒動という環境条件のために非常に苦労するといった具合だ。そういう環境の変化があり得ることを想定して初期条件を設定する必要がある」

 また、「商売は10年先を見るよりも1歩先を見るとよい」と語った。自分の足もとをしっかり見ること、現在の状況をしっかり知ることが大切だという。

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