本社記者平壌レポート
黄北佐位里のそば打ち名人
玉流館などにも出張、技術を伝授
イム・ヨンサムさん(68)とチェ・ヨンフアさん(69)は佐位里の宿で32年間、出張などで訪れる客にそばをご馳走してきた。 「私たちはあくまでも農民で、調理師のように専門家ではない。でも丹精こめてつくっているのでおいしいのだと思う。見た目の良さにも気をつかっている」 今まで平壌の玉流館、咸興の新興館などクッスで名高い食堂に出向き、数日寝泊りしながら技術を伝授してきた。それでこの業界では、老夫婦を「名人」と称えている。 イムさんは日本の植民地時代、母が生計をたてるために始めたそばづくりを引き継いだ。彼のつくるそばは、他のそばにくらべると色がとても白い。イムさんは「そばを乾かすときにも土や砂などの不純物を取り除き、粉にした後もていねいに不純物を除去した結果、白くなる」と説明、見た目も味も良いと胸を張る。 そばの原材料は倉庫に保管しておいて、客が宿に来るとつくり始める。したがってそばは出来たて。これもおいしさの秘訣だ。 イムさんとチェさんは結婚して50年間手を取り合い暮らしてきた。畑を耕すときも、そばをつくるときも、地方の食堂に出張に出かけるときも、2人はいつも一緒だ。 イムさんが宿を営み始めた当時、ほかの人たちと料理をつくり接待もしたが、事はスムーズにいかなかったそうだ。それならば気の合う妻と一緒にやってみようと、2人きりで始めた。 この宿に来てそばを食べる客は揃って「おいしい」と同時に、「ありがとう」という。老夫婦の苦労をねぎらってのこと。そば1杯を食べるのは簡単だけど、つくるのは大変だ。 「みんなに喜んでもらいたくて、地方の食堂にも調理法を教えているのだが、ほかではこの味は出せない。私たちがつくるそばは1番ここの風土があっているんだ」 老夫婦はこの地をこよなく愛している。【平壌発=李松鶴記者】 |