医療−最前線

医療機器と携帯電話


 先日、横浜で開かれた第24回医協学術報告会に参加した。報告会は開会に続いて分科会に分かれて日ごろ積み重ねてきた研究論文の発表があり、活発な質疑応答があった。

 私は看護部門の分科会に参加した。そこで興味を引いたのが、ある病院の臨床工学士さんが行った院内での携帯電話と医療機器の共存に関する報告だった。その病院では携帯電話の使用がテレメーター、輸液ポンプ、自動血圧計、ネブライザ、人工呼吸器などの医療機器にどのように影響するかを十分に離れた距離から密着状態に至るまでを実際に実験・調査した。

 その結果、重要な監視装置や生命維持装置などでは影響が出たが、他の一般機器にはほとんど影響がなかったという。つまり、重要な医療機器のある手術室やICU、外来でペースメーカー使用の患者がいる時は、使用不可能であるが、医療機器を使用していない一般病棟では使用可能だという結論だ。

 一般的に何処の病院でも院内では携帯電話は医療機器に誤作動などの悪影響を与えるので一切使用禁止となっている。しかし、一定の条件が整えば、という条件つきで使用可能ではないだろうか。とくに、歩行が不可能な患者さんにとって携帯電話は家族との会話を結ぶうえでとても効果的。

 常識を覆す発表だったので私も驚いた。発表者は病院側に対する問いかけの意味もあったと正直に語った。なお、病院側は一切コメントをしていないと言う。もちろんこの論文の結論はどうであれ、従来通り、院内での携帯電話は使用禁止です。念のため。
(李秀一・医療従事者)

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