春・夏・秋・冬

 クリントン前大統領の一人娘、チェルシーさんが留学先の英オックスフォードで開かれた反戦集会に乱入したという報道には驚いた。8日、市内で行われたアフガニスタンへの攻撃に反対する集会に集団で押し寄せ、うち2人が星条旗を広げ、演説を妨げたという

▼米国は世界で最も自由を標ぼうする国ではなかったのか。反対意見を力で封じ込めようとすることには率先して反対してきたはずだ。9月のテロ事件以来、米国では報復戦争に面と向かって異を唱えられない空気がある。軍事制裁を批判するだけで愛国心が足りないと見られかねないそうだ

▼乱入したチェルシーさんは、「ニューヨークのテロ犠牲者のことを忘れてはいけない」とやじを飛ばしたそうだが、誰も忘れたわけではない。だが、罪もないアフガンの一般人に空爆の制裁を浴びせるのもテロ行為と言えまいか

▼日本でも、日本貿易振興会(JETRO)アジア経済研究所のリポートが印刷後に回収されるアクシデントがあった。テロ事件とその後の空爆に関してアジア各国の新聞論調をまとめたものだが、「米国のごう慢な外交姿勢を批判する見解が紹介されている」などの表現が不適切と判断されたためらしい。こちらの方は 自粛 だが、それを迫る圧力が存在することは想像に難くない

▼異なる意見を排除する言論統制が何をもたらすかは、敗戦前の日本などが実証済みだ。どんな事に対しても、自由に意見が言えない状況は尋常ではない。さまざまな意見の中から、ベストの答えを見いだす。それが民主主義であるはずだ。(聖)

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