日本人は救済、外国人は排除
無年金同胞 日本政府の対応
在日朝鮮人をはじめ外国人高齢者、障害者を国民年金制度から排除してきた日本政府。その差別的な姿勢は徹底、一貫している。
82年の改正時「解決すべき」と明言
日本政府は1982年、それまで日本国籍者に限って認めていた国民年金への加入を外国人にも認めた。高まる非難の声や国際人権規約、国連・難民条約への加入を受けてのことだった。 難民条約の24条には、社会保障において「自国民に与える待遇と同一の待遇を与える」と明記されている。内外人平等の原則だ。 日本政府は国籍条項を撤廃する際、従来、日本人だけを対象にした国民年金の差別的な体質を一掃すべきだった。しかし、それまで年金制度に加入できなかった外国人が無年金に置かれるということを承知のうえ、経過措置を取らず放置した。これは、内外人平等の原則に反する憲法違反、国際法違反だ。 当時、国会でもこの点が指摘された。 81年2月28日。社会党(現在の社民党)の土井たか子議員は、第94回衆議院予算委員会第3分科会で「外国人障害者の経過措置を考えてもらいたい」と園田直厚生大臣(当時)に異議を唱えた。 土井議員の質問に対し園田大臣は、「経過措置をやると(難民条約の)批准に間に合わなくなる。そうした問題は、その後の年金法の改正の中で考えていく」と答弁。また5月12日の参議院社会労働委員会会議で同大臣は柄谷道一議員の質問に対し、「解決すべきである」と答えた。 しかし、これらの答弁はき弁に過ぎなかった。その後、経過措置が取られなかったからだ。 同胞高齢者、障害者への年金給付を拒否する厚生労働省の理屈は次の2点だ。 @国民年金制度は社会保険方式が基本なので、82年まで保険料を払っていない在日外国人には年金を支給できない。A82年の国籍条項撤廃は制度の発足ではなく、制度の拡大。経過措置とは、制度発足時に行うもので制度の途中ではしない。 しかし、厚生労働省の論理はまったく理に合わず破たんをきたしている。 そもそも、82年まで外国人は国籍条項のため年金に加入できなかった。それまで国民年金に加入できず、保険料を払いたくても払えなかった人たちが保険料を払っていないから年金を支給できないというのはひどい理屈だ。 また、制度の途中で経過措置は取らないというが、実際には68年の小笠原返還と72年の沖縄返還の際、当該地域住民に対して、95年には中国残留帰国者に対して、それぞれ経過措置を取っている。外国人だけ救済をしないというのは明らかな差別だ。 自治体も要望 94年には附帯決議 日本政府は破たんしたこの論理を崩そうとしない。 昨年3月、京都に在住する無年金の同胞聴覚障害者7人が日本政府を相手取り、京都地裁に裁判を起こしたが、この場でも差別的な発言を繰り返している。 国民年金法を作った時、国籍条項を入れた理由については「国民年金は最低25年以上保険料を収める必要がある。外国人は一般には短期滞在者。年金受給の資格を得る前に途中で帰国した場合、それまで払った保険料は無駄になる」と在日同胞の歴史的経緯を無視した発言をし、沖縄返還時や中国残留帰国者には経過措置を取り、外国人障害者には取らなかったことについては、「沖縄県民も中国残留邦人ももともと日本人、加入するのが遅れただけ。最初から除外の外国人とは別」と、これまた差別的な主張をしている。民族と障害という二重の差別を受け、現在も苦しい生活を強いられている同胞障害者の怒りは募るばかりだ。 日本政府の差別的な対応に対し、多くの自治体が独自の給付金制度を設け、国に年金法改正も求めている。 94年11月2日、衆議院厚生委員会は「無年金障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め速やかに検討すること」という附帯決議を採択した。しかし、7年たった現在も改善の動きはまったくない。(張慧純記者) 75歳以上の高齢者、39歳以上の障害者なぜ無年金? 国籍条項で排除、経過措置取らず 現在75歳以上の同胞高齢者、39歳以上の同胞障害者は日本政府の差別的な政策によって国民年金を受給できない。同胞高齢者・障害者は、日本の植民地支配によって日本での生活を余儀なくされた人たちで、納税義務も負っている。しかし、国民年金制度成立時(1959年)に同制度には国籍条項があったため、在日同胞をはじめとする外国人は加入できなかった。 82年1月1日、日本政府は国籍条項を撤廃したが、25年間保険料を納付できなかった当時60歳以上の外国人高齢者や、その時点で20歳以上の外国人障害者には経過措置を取らなかった。 86年4月の法改正時に一部救済措置が取られ、外国人が除外されていた20年9カ月が資格期間に合算されたが、この時点で60歳以上の高齢者・24歳以上の障害者には適用されなかった。 本来なら高齢者には月額3万4000余円の老齢福祉年金が、障害者には1級で月額8万3000余円、2級で6万5000余円の障害基礎年金が支給される。 |