アフガン攻撃
朝鮮での論調・報道
9月11日に起きた大規模テロ事件に対する報復措置として、米国は10月8日、アフガニスタンに対する攻撃を開始した。朝鮮外務省スポークスマン、労働新聞の論調と、朝鮮マスコミがどのように報じているかをそれぞれまとめた。
外務省・労働新聞 テロと報復の悪循環に憂慮/正当化できぬ米の武力行使 朝鮮外務省スポークスマン(10月9日、朝鮮中央通信社記者の質問に対する回答=全文) 対米テロ攻撃事件以来、「軍事的報復」を宣布し、その準備をあらゆる面から急いできた米国はついに10月8日、対アフガニスタン軍事攻撃を開始した。このため、世界は一つの危機に直面するようになった。 すでにせん明したように、あらゆる形のテロとそれに対するいかなる支援にも反対するのはわが国の原則的な立場であり、よってわれわれは終始一貫、テロに反対してきた。われわれがテロに反対するのは、世界の平和と安定を図り、国と民族の自主権、人民の生命と財産を守るためである。 テロとの闘争方法もあくまでこうした目的に合致すべきであり、それに反して罪のない住民が殺されたり地域の情勢と安定を破壊する武力行使や戦争の方法は、いかなる場合にも正当化されない。われわれは、米国の今回の行動が世界を戦争の惨禍に陥れかねないテロと報復の悪循環を招くことになってはならないと思う。 これまで、われわれがテロに反対して自らなすべきを果たしてきたにもかかわらず、米国は今もなお、途方もなくわが国を依然として「テロ支援国」リストに載せ、敵視政策を追求している。こうした状況でわれわれは、むしろ今回の事態発展に警戒心を持って臨んでいる。 われわれは、誰が何と言おうと自ら選んだ道に従って国の防衛力を全面的に固めてきたことに当然の自負心を抱いている。われわれは、いかなる場合にも対処できる万端の態勢を整え、事態の発展を綿密に注視するだろう。 労働新聞10月23日付(署名入り論評=要旨) 世界は今、米国の主導のもとで行われているアフガニスタンに対する報復攻撃作戦と複雑な情勢の流れを鋭く注視している。世論は、このような事態に対して深い憂慮を表しながら、今のような状態が続くならテロと報復の悪循環は避けられないとし、異教徒とイスラム教勢力間の戦争、新しい世界戦争が起こりうる可能性について警告している。 テロは決して正当化されえず、それに対するいかなる支援も許されてはならない。 あらゆる形のテロとそれに対するいかなる支援にも反対するのはわが国の原則的立場であり、そのためわれわれは一貫してテロ一般に反対してきた。われわれがテロに反対するのは、世界の平和と安定をはかり、国と民族の自主権を守護し、人民の生命と財産を守るためである。テロとの闘争方法もあくまでこうした目的に合致すべきであり、それに反して罪のない住民を殺害したり地域の平和と安定を破壊する武力行使と戦争の方法は、いかなる場合にも正当化するわけにはいかない。 テロを行ったのはきわめて少数の者であって、絶対多数の人々はテロとは無関係である。したがって、罪のない民間人が反テロ作戦の犠牲になってはならないし、テロの根源を一掃するからといって軍事行動を他国にまで拡大するのは反テロ闘争の目的に反し、それは逆に重大な結果を招きかねない。テロと報復の悪循環が起これば、平和と安全、安定が破壊され、数多くの罪のない人民が被害を受けるだろうし、ひいては世界が戦場と化し、人類が途方もない災難に見舞われかねない。 自主権の尊重はテロ防止の最善の方途である。地球上で起こるすべての軍事的衝突や戦争のような非正常な事態はその性格と形態がどうであれ、結局は他国と他民族の自主権と利益の侵害、じゅうりんに端を発している。すべての国と民族が自主権尊重の原則をしっかり守ってこそ、健全な国家関係と国際秩序が樹立され、ひいてはあらゆる形のテロと軍事的衝突もなくすことができる。 われわれは、国と民族の自主権、人民の生命・財産と安全を守り、平和と安定を保障するという観点から、反テロ闘争において自分のなすべきことをすべて果たしている。ところが米国は今もなお、われわれを「テロ支援国」リストに載せ、対朝鮮敵視政策を実施しながら、われわれの自主権と安全を由々しく威嚇している。米国はアフガニスタン攻撃作戦と関連し、朝鮮半島での「戦力の空白」「突発的事態対応」をうんぬんしながら南朝鮮占領米軍武力を強化し、「高度警戒態勢」を取らせながら情勢をいっそう緊張させ、戦争の危険を増大させている。 自主権と平和、人民の生命と安全は、どんな場合でも徹底して保障されるべきである。米国の報復作戦はこれに合致して行われるべきだというのが世界の民心と公正な世論の要請である。 朝鮮中央通信 外電引用し詳細に報道/米、タリバン、北部同盟、関連国まで 朝鮮中央通信は、米が軍事作戦を開始した翌日の10月9日、また地上作戦を開始した2日後の18日に、それぞれ外電にもとづく形で戦況について詳細に報じている。 9日発朝鮮中央通信の第一報は、「報道によると、8日未明、米国がアフガニスタンに対する軍事作戦を開始した。首都カブールに飛行隊の空襲と巡航ミサイルによる最初の打撃が加えられ、ついでタリバンの軍事拠点であるカンダハルとジャララバード、ヘラートなどの都市も空襲を受けた。その後まもなく、カブールとカンダハルに対するより集中的で強力な空襲が何回もあった」と始まった。 そしてCNNなど米国の各テレビ報道、アフガニスタン・イスラム通信などを引用する形で、「タリバンは代償を払うことになった」と述べた米大統領の放送演説とその動向、米統合参謀本部議長の詳細な攻撃状況に関する会見内容、米軍の攻撃に合流する旨を明らかにした英国首相の特別声明を伝えた。 またタリバン当局が米国の攻撃をテロ行為と糾弾してタリバンには聖戦の用意があると表明し、ビンラディンを絶対に米国に引き渡さないと宣布したこと、その被害状況と応戦の様子、攻撃に移った北部同盟の動向などを伝えた。 さらに米CNNを引用する形で、ビンラディンが「米市民は安全ではない」「(自分自身とアフガニスタンに対する攻撃は)イスラム教に対する戦争になる」「われわれが安全と安定を享受できない限り、米国に住んでいる人々も絶対に安全と安定を享受できないだろう」と警告したことについて言及し、米紙ワシントンポストなどを引用して、米国がアフガン攻撃によるさらなる反撃は免れないと予想しながらも、その防止に努めている様子を報じた。 最後に外電を引用し、今回の戦争が長期化する見通しだと伝えた。 18日発朝鮮中央通信は、「米国主導下の武力攻撃開始で起こったアフガニスタンでの戦争が続いている。報道によると、米軍と英国軍は戦争初日から連日、首都カブールとジャララバード、カンダハル、ヘラートなどアフガニスタン全域に対する集中的な空襲作戦を行っている」として、戦況について報じた。 通信はまず、この作戦に米国が、アフガニスタン周辺地域の地上基地に密かに展開していた爆撃機と戦闘機など100余機の軍用機、そして250余機の艦載機と40余隻の艦船を含む4つの空母船団を、英国は30余隻の艦船と2つの海軍陸戦隊、数十機の戦闘機を投入したことなどを伝えた。 また米英軍が最初の数日間、タリバン軍の対空武力と飛行場、燃料・弾薬倉庫を主要目標として空爆を実施したことにより第1段階の目標を達成し、続いてタリバンの地上軍武力への攻撃に空襲の焦点を合わせたと米大統領のラジオ演説などから分析、紹介した。 そして14日、15日の空爆内容と、タリバン政府国防省の発言を引用してアフガニスタンで女性や子どもをはじめとした民間人が犠牲になっていることに言及した。 続いて通信は、「集中的な空襲作戦に続き16日、米国はアフガニスタンでの地上作戦を開始した。同日未明、米軍特殊部隊がタリバンの軍事拠点カンダハル市に投下され、都市の南方で米軍特殊部隊とタリバン軍第55師団の間にし烈な戦闘が始まった」として、地上作戦開始について報じた。 またインド紙、サウジアラビア紙、米紙などを引用して、米が地上作戦の出発陣地にウズベキスタンを、支援基地にパキスタンを利用することにしたこと、その心理戦や情報戦、ビンラディンの逮捕に2500万ドルの懸賞金を出すとしていること、タリバン政権崩壊後のアフガニスタン新政府における米国の役割について論議をはじめたことなどを伝えた。 一方、タリバン側の反発についても詳細に触れ、最高指導者オマルの「死ぬまで戦って勝利する」「われわれとたたかい、われわれを爆撃する者は、アフガニスタン人が聖戦に準備された戦闘員であることを知るべきだ。アフガニスタンの地は『異教徒』の墓になるだろうし、われわれにはそのための兵器が十分にある」という発言に言及。英国の週刊誌を引用してタリバン軍の兵力装備について紹介し、「10年間は戦争を十分に行える」という同誌の見解を伝えた。 さらにタリバン軍と北部同盟軍の攻防戦についても伝えながら、現在もタリバン側が明白な証拠なしにはビンラディンを米国に引き渡せないと主張していること、ビンラディンがすべてのイスラム教徒にイスラム教を守るため決起するよう呼びかけたこと、ビンラディンの組織「アルカイダ」が声明で米国主導下の軍事攻撃に対する報復として米英への新しい飛行機自爆攻撃を加えると警告していることなどを報じた。 一方、炭そ菌騒動に代表される米国内の混乱、緊張状態についても詳細に伝え、戦争の長期化、アフガニスタン以外の国への拡大可能性などに関する各外電の見方についても紹介した。 |