中村百合子追悼展
5日から東京・銀座で
平壌スケッチ紀行を敢行したこともある洋画家中村百合子追悼展が5日から10日まで東京・銀座の東京文芸春秋画廊で開かれる。
中村さんは2000年9月25日、永眠した。毎年開かれている銀座の個展開催の前夜のことだった。欧州からアフリカ、中東、インド、中国、朝鮮という西から東への30年に及ぶ60ヵ国以上の国々への旅は、まさに「地球人・中村百合子」の面目躍如に相応しかった。「自己の確かな眼を持って風景と人間を濃密に描き続けた」(美術評論家・佃堅輔氏)と高く評価された。中村さんをこのように駆り立てたのは、ひたむきな人間愛ではなかっただろうか。画家のエネルギッシユな気迫と、古今東西の歴史と人へのくめども尽きぬ愛と興味が凝縮されたそれぞれの絵は鑑賞する人々を魅了してきた。 「世界中を旅して心引かれるのは砂漠。砂漠では私はひとり。大自然の摂理の不思議さと神秘さと。めくるめくような思いの中で、人間の原点に回帰するのです」と、語っていた。 90年、秋の平壌を訪れた際、その印象を「あまりの美しさに、夢中でペンを走らせた。住む世界は違っても人間はみな同じです」と語り、板門店で会った人民軍兵士の美丈夫ぶりをとくに気にいっていた。 6年前、尼崎市の自宅で大震災にあい、家も塀も壊れた。この時、中村さんは自宅の修理を後回しにして、まず被災した神戸の朝鮮学校の救済運動に立ち上がった。それを知るだけにいまだにその死は信じられないものがある。(粉) |