春・夏・秋・冬

 連日、何事もなくアフガン戦線に対する米国の「大本営」発表が報じられる中、日本軍・自衛隊が米軍の攻撃を支援する「テロ対策特別措置法」が日本国会で成立した。2日から即日、施行される。審議からわずか1ヵ月余り、日章旗は何の障害もなく海外でひるがえることになった。戦前を思い出し身の毛がよだつ1世同胞たちは多いのではないか

▼ニューヨークでの衝撃的な事件がきっかけだとはいえ、こうもいとも簡単に日本軍が「自衛」の看板を下ろして再び海外に出ていくことになるとは。侵略、敗戦の教訓に立って日本社会で語られてきた平和論議はなんだったのか、と空虚な気持にとらわれてしまう

▼堀田善衛の代表作の一つ「広場の孤独」の冒頭、新聞記者の主人公が朝鮮戦争の勃発を伝える外電を目にしながら、戦争が始まったと、日常生活の一コマに過ぎないかのようにつぶやく部分がある。敗戦から5年、まだ戦争は生活の一部分として感じ取られていたのだろう。しかし、それから半世紀以上が過ぎた今日、戦争体験の風化が日本軍海外派兵の道を切り開いたのだろうか

▼筆者も戦争を知らない世代の一人だが、アフガンに空爆が続けられる一方で、戦争とは縁もゆかりもなく過ぎ去る日常生活とのギャップの大きさに考え込んでしまう場合がしばしばだ。しかし世界では、第2次大戦後、朝鮮、ベトナムを始め数多くの戦争が繰り広げられてきた

▼平和と戦争という相反する現実の共存。その現実に無為に流されてしまってはならない。日本軍侵略の悪夢を再来させないために。(彦)

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