北海道朝高サッカー部、藤代隆介コーチ
猛勉強した朝鮮語で指導、朝・日交流にも一役
友人の同部OBの依頼が縁
「ナガラ(行け)!」「チョウン ポル(ナイスボール)!」――グラウンドに藤代隆介・北海道朝高サッカー部コーチ(28)のゲキが飛ぶ。コーチのアドバイスを一言でも逃すまいと技術指導を受ける同校ナインの目は、真剣そのものだ。
練習が終わった途端、引き締まった「選手」の顔がやんちゃ坊主の笑顔に戻る。そんな彼らを見守る藤代コーチの目は、まるで実の兄のように温かい。 「彼らはとにかくサッカーが好き。ひたむきにボールに向かう姿勢は交流している日本高校の監督たちの間でも評判で、最近では『高校は朝鮮学校に入れようかな?』と冗談交じりに言われるほどなんですよ」 藤代さんは帝京高校サッカー部時代、日本一の感動を味わったメンバーの一員。選手たちにとっては憧れの人だ。印象をたずねると、「指導は厳しいが、普段はひょうきんでいつも僕たちを盛り上げてくれる。うまくなるにはどうしたらいいのか、健康管理の方法など、サッカーのことは何でも相談します」と口をそろえた。 高尚徳くん(高3)は「コーチにほめられるとすごくうれしい反面、ここで満足してはいけない、もっとがんばらなくちゃといっそう気合いが入る」と語る。 藤代さんは3年前、石川県にあるサッカー専門学校ルネス学園時代の友人で同校出身の趙好烈さん(27、現朝大サッカー部コーチ)に誘われ、コーチとして赴任した。指導は「彼らの言葉で接したい」との思いから、2年目の1年間、編入生とともに猛特訓した朝鮮語で行っている。 高校時代、隣接している東京朝高のサッカー部が全国大会の出場権を得られないことを知り、心が痛んだという。「やっと時代が変わってきたのを感じる。この子たちには夢をかなえさせてあげたい」と意気込む。 「日本の先生にもっと朝鮮学校を知ってほしい」というコーチの働きかけで交流の輪も生まれた。同校では現在、夜のグラウンドを社会人のクラブチームや区選抜に無償で提供している。崔寅泰校長(49)は、「コーチから頼まれ、地域の貢献と交流につながると快く承諾した。サッカーを通して日本の人々と触れ合うことで、子どもたちの視野も広がっている」と語る。 今年の夏、選手たちは目標のハードルを一つ越えた。第80回全国高校サッカー選手権大会で朝高が道予選ベスト8に残ったのだ。選手たちの活躍が周囲の目を変え始めた。 「彼らから日本人としての誇りを教えてもらった。もっと朝鮮学校を、生徒たちの素晴らしさを知ってほしい。そこからすべてが始まる」(李明花記者) |