月間平壌レポート  2001.10

平穏な日常の中に緊張感

米のアフガン攻撃に大きな関心


今年の秋、平壌の気候はとても穏やかだ
(普通江のほとりで)


予測不能の事態

 米国のアフガニスタンに対する報復攻撃の開始は、平壌でも詳しく伝えられ、市民の関心を集めている。

 朝鮮中央通信は8日、「米国のアフガニスタンに対する軍事作戦開始」とのタイトルで、米国の姿勢と軍事攻撃の模様、アフガニスタン側の姿勢、被害状況などを報道、9日付労働新聞など各紙はこのニュースをいっせいに掲載した。

 米国の軍事攻撃開始は、この日平壌市民のもっとも大きな関心を引いたニュースであった。「この記事から読んだよ」と語る市民の反応は関心の高さを示していた。

 朝鮮外務省スポークスマンが9日、「米軍の軍事報復作戦はテロと報復の悪循環を招くものとなってはならない」との談話を発表したのは周知の事実。このコメントの中に示されている厳しい情勢認識を市民は共有し推移を注視している。

 「米国の報復作戦に関連して事態はきわめて複雑で緊張しており、予測することができない」

 「われわれは自衛的国防力をより強化するであろう」と題した労働新聞(21日付)の論評が指摘するこのような情勢認識は、外交および北南関係関係者も重ねて強調している。

 また注目されるのは、同論評が襲撃事件後、あらゆる形態のテロとそれに対するどのような支援にも反対する朝鮮の立場を米国に伝えた事実を明らかにしたことだ。このような立場は外務省スポークスマンによるコメント発表と同時に外交チャンネルを通じて伝えられた模様だ。にもかかわらず、「軍事的空白を埋める」との口実で米国が朝鮮半島で戦力を増強していることに、関係筋は強い警戒感を示している。

南側の措置に不信感

 平壌市民の関心を集めた今一つのニュースは、予定されていた離散家族交換訪問とテコンドー師範団ソウル訪問の一時延期である。12日、祖国平和統一委員会は談話を発表、南側で米国の軍事作戦開始と同時に軍と警察に「非常警戒措置」が発令されたことと関連し、行事の延期を発表した。

 市民の反応は冷静だが、米国の動きに連動する南側の措置に不満の感情を覗かせている。というのも、「非常警戒措置」が北側軍部の動向をうんぬんし、発令されたためだ。「米国に対する支援」で、北南関係に緊張をもたらすものではないとの南側の論理は、ここではまったく説得力をもたない。なぜアフガニスタンでの軍事作戦に北側の軍部の動向がうんぬんされているのか、というのが素直な感情であろう。

 軍事作戦開始の時点で北側関係者の見方は楽観的であった。しかし、南側での「非常警戒措置」の発令は、「直接的な影響はないだろう。合意のまますすめる」との姿勢を示していた北側関係者を刺激した。

 北南関係において南側の「和解政策」を進めるとの姿勢と、それに冷水を浴びせ緊張感をあおる軍部など右翼保守勢力の動きは常に同居していた。さらにブッシュ政権が南側の「和解政策」に露骨な圧力を加え、それに便乗する右翼保守勢力が対決姿勢を強めてきた。

 ブッシュ政権の対北強硬策が続く中、米国の軍事行動に歩調を合わせ北側を刺激、緊張感を高めたことは、民族が力を合わせて統一への道を切り開くことを約束した6.15共同宣言の精神に反するとの北側の主張に説得力を持たせている。

 米国と保守勢力によってもたらされた障害を効果的に排除しながら、北と南が対話を通じて緊張状態を打破していこうというのが北側の立場であるようだ。当局間の対話が継続されるべきだとの点で双方の立場は一致している。会談場所をたてに対話を延期させることはおろかなことだ。

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 戦争拡大の危険をはらむ米国によるアフガニスタン攻撃が平壌市民の意識に緊張感を漂わせているが、10月の平壌は穏やかで、市民の日常は平穏だ。実りの秋であるばかりか、平壌は例年になく温かく市民の表情も明るい。

 10月8日は「寒露(ハンロ)」。秋分(9月23日)についで、季節の変わり目を指す節目だが、「寒露」を機に昼夜の温度差が激しく露が降りる。

 また、「寒露」に入ると気候が不安定になるが、9日から10日にかけて東海岸の元山地方に411ミリの豪雨が降り大きな被害を受けた。1919年以来の事という。ちなみにこの両日の平壌地方の降水量は80ミリ。

 東海岸一帯を襲った被害に対する国際的支援が呼びかけられる一方、平壌市民も被害地域に対する支援運動を行っている。【平壌発=文光佑記者】

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