女のシネマ

今日から始まる

子供の輝き取り戻す奮闘


 炭鉱の閉鎖によって、失業者あふれる北フランスの町エルナン。この町の幼稚園園長ダニエルが女性教師らスタッフとともに、貧しさゆえに日々言葉と感情を失ってゆく子供たちを救うために奮闘。教育現場の抱えるさまざまな矛盾や社会の不公正を告発する勇気を描いた映画。

 「幼稚園の教師の仕事は黒板の前だけ」という規則を破り、ダニエルが訪れた失業者家庭は悲惨そのもの。料金未納で8カ月以上も電気と水道を止められ、酷寒にも暖房なしの生活。また、1週間分の食費に当たるとして、学期毎の負担金30フラン(540円)が払えない家庭も。

 飢えと寒さで輝きを失う子供たち。生活保護をもとめて奔走するが、冷たい町や福祉事務所の対処に憤激、ダニエルは真っ向から対立する。

 加えて、幼稚園の予算は切りつめられ園児は増える一方。非行少年の幼稚園荒らし、幼児虐待家庭への対応に苦慮する中で、ついに起こる母子心中の悲劇。息つく暇もないほどのオーバーワークで、限界に達していたダニエルとスタッフたちは、衝撃で起き上がれないほどの無力感にさいなまれる。

 厳しい教育現場で決定権を持たぬ教師のジレンマと、どんな小さな要望でも煩雑な手続きを必要とする教育行政への憤りがビンビンと伝わってくる。そこから、どんなことでも声を上げて行動することで達成できるのだという強いメッセージも。

 人生は毎日、小石を積み重ねてゆくようなもの。その努力と勇気が親から子へと伝えられてゆくことだと謳うエンディングの詩の余韻が深い。

 そして、ダニエルの周りの女性たちが魅きつける。彫刻家の恋人ヴァレリア、女性福祉士サミア、女性教師たち。きちんとした仕事ぶり、目的意識性の高い情熱が、子供たちの笑顔をとり戻す。それはダニエル園長を奮い立たせる強い原動力。闘いは続く。

 ベルトラン・タヴェルニ監督。116分。フランス映画。岩波ホール。(鈴)

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