広がる対日警戒心

反対世論の高まりの中小泉総理、南朝鮮を訪問


 小泉純一郎総理が15日、反対世論が高まる中で南朝鮮を訪問した。しかし市民団体は「実質的な過去の清算なしに、またも言葉あそびで韓国民をたぶらかした」と一斉に非難。南朝鮮の新聞も「小泉なぜ訪韓した」(中央日報)、「小泉総理の訪韓遺憾」(東亜日報)、「日総理のからっぽの訪韓手荷物」(京郷新聞)と批判的にとらえている。

過去の清算を回避

 「小泉総理の訪韓容認を即取り消せ」

 南朝鮮の市民団体は小泉総理が訪問する以前から、「日本が過去の責任を回避したまま、軍国主義を復活させる動きがある状況で訪韓はありえない」と、1000万署名運動などの反対行動を繰り広げていた。当日は100を超える団体がソウル市内10余カ所で反対集会を開き、デモを行なった。

 小泉総理の訪問に関しては政界からも、「これまでの問題を解決し新しい関係を構築できないなら、来ない方がまし」(李萬燮国会議長)と、反発が起こっていた。予定されていた国会訪問が中止されたのも、ハンナラ党議員らの反対が強かったからだ。

 南朝鮮では日本政府とりわけ小泉総理に対して根強い不信感がある。

 4月の小泉内閣発足当時総理は、靖国神社参拝を明言し、交戦権放棄を明示した憲法9条を見直す意思を公式に明かした。わい曲された歴史教科書問題は、小泉総理が就任する前から騒がれていた問題だが、日本当局が内外の批判と警告を一蹴し、「つくる会」の教科書を検定通過させたことで「右傾化する日本」という世論を決定づけた。

 南朝鮮では「日本政府は保守・右翼の風潮が急速に強まっているという内外の批判に対して、意見の多様性を最大限保障する戦後民主主義体制の無理解による誤解に過ぎないと反論してきた。しかし、(教科書検定通過によって)このような説明はもう通用することは難しくなった」(ハンギョレ新聞、4月27日付)と、警戒心が高まった。

 そして内外の反発にもかかわらず、小泉総理は8月靖国神社参拝を強行、教科書問題とともに反日運動がさらに盛り上がりを見せたのは周知のとおりだ。

 こういう状況で南を訪問する小泉総理を、マスコミは「厚顔無恥で、ごう慢外交の極致」(京郷新聞)と非難していた。大多数の市民の心情を代弁したものと言える。

海外派兵の既成事実化

 小泉総理は今回、過去の問題で「反省とおわび」を表明した。しかしマスコミは、懸案となっていた歴史教科書問題は、歴史共同研究機構を設置して正しい記述がなされるよう努力すると逃げ、靖国神社参拝問題は、反省もしなければ今後参拝しない意志も明らかにしなかった、と批判している。

 韓国日報は、今回の訪問は失敗だったとしながら、その理由を「歴史認識のギャップがひどかった」としている。

 小泉総理は「反省とおわび」を表明する反面、「過去をともに反省」、「戦いを反省し友好関係を築いた日米関係を見本に」(朝鮮に対する植民地支配と対米戦争を同じ次元でとらえている)と語った。誤った歴史認識を露呈した。これに対して、京郷新聞は「過去の責任を巧妙に薄めようと智謀を発揮した」と激しく非難した。

 この時期に南朝鮮を訪問した動機に対する疑問も広がっている。中央日報は「小泉総理は反テロ戦争という新しい国際状況を利用し、就任以来足かせとなっていた近隣外交の負担から抜け出すと同時に、自衛隊海外派兵を既成事実化する一挙両得の効果をねらって」訪問したのではないか、と指摘した。

 日本では小泉総理の南朝鮮訪問で懸案解決に向けたきっかけを作ったとの評価もあるが、南朝鮮では「小泉総理の(ソウルにおける)声明は欺まん的な政治ショーに過ぎない」(独島学会)との世論が高まっている。

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