京都コリアン生活センター
「エルファ」奮闘記(2)
独自でヘルパー養成講座
短期間で集中的に
京都府下にいる65歳以上の同胞高齢者は4000人を超える。府内で同胞向けの介護サービスを行う業者は「エルファ」だけなので、専門資格を持つ人材の育成も一手に引き受ける覚悟で挑んできた。 介護保険のサービスが実行されるまでには、@訪問調査員が生活動作を中心に85項目を調査A調査データと主治医の意見書を付した資料をもとに「認定審査会」が要介護度を認定Bケアマネージャーがケアプランを作成C「指定居宅サービス事業者」が派遣するヘルパーが介護サービスを提供する――という流れがある。 サービスの鍵を握るのはホームヘルパーだ。 ヘルパーの資格(1〜3級)取得者を早急に育てる必要があった。3級は家事援助にしか携われない。そこで身体介護に携わることができ、数カ月の研修で資格が取れる2級ヘルパーの育成に努めた。 誰にヘルパーをしてもらおうか…。ともに頑張ってきた同胞女性たちの顔が目に浮かんできた。朝鮮学校の運動会や地域の集まりで売店の準備に精を出し、近所の同胞に何か起こった時、自分のことのように気をもみ、親身になる彼女たち…。彼女たちなら1世の気持ちを汲み、誠心誠意の介護をしてくれるだろう。ヘルパー候補者の名簿をつくり、地域にばらつきが生じないよう62人をピックアップした。 そして、全員に会って協力を要請。賛同してくれた同胞たちは市主催のヘルパー養成講座を受講した。すでに資格を取得していた同胞にも声をかけ、現在は42人のヘルパーを抱えるまでに至った。京都の介護事業を支える頼もしい人材だ。 豊富で優秀な人材 当初は市の養成講座を利用していたが、短期間で多くの同胞ヘルパーを育てる必要があったことから、独自の講座を開けるよう努力した。そのためには法人資格を取得し、講師陣をそろえる必要があった。 第1段階として昨年8月、福祉法人「くらしのハーモニー」の協力を得てヘルパー2級養成講座を開講。その後、NPO法人の資格を取得し、講師陣の発掘につとめた結果、7月に府知事から「訪問介護員養成研修事業者」の認定を受け、9月から独自の講座を開くことができた。 「エルファ」からは私と看護婦の朴三紀さんが講師として出演。社会福祉士の李静子さん、医師の朴錫勇さん、大阪お茶の水医療秘書福祉専門学院の韓丘庸講師、福祉住環境コーディネーターの金周萬さんら同胞専門家の助けも借りた。今つくづく感じるのは、福祉分野においても同胞社会には優秀な人材がたくさんいるということだ。 在日高齢者向けの通所施設は、京都では「エルファ」1カ所だけだ。同胞社会で高齢化が進むことや利用者の負担を考えても、府内の数カ所(朝鮮学校の学区単位)に同様の施設が必要だ。まだヘルパーも足りない。 現在、「エルファ」の職員が1級ヘルパー、ケアマネージャーの資格取得を目指して勉学に励んでいる。1級ヘルパーの受験資格は2年の介護実績、ケアマネージャーは看護婦などの資格取得者で5年以上の実務経験が必要だ。職員の中にケアマネージャーが一人いれば「エルファ」は介護支援センターに昇格し、より専門的なサービスを提供できるようになる。 ケアマネジャーも 資格を取ったからと言って、現場に対応できるという訳ではない。実践と理論を積みあげ、よりよいサービスを提供する必要があった。 そこで昨年9月、同胞高齢者の歴史と現状に合った「ウリ式デイサービス」の研究会を発足させた。 研究会では、同胞ヘルパーの役割、同胞高齢者の特性などのテーマを取り上げ、それぞれが経験した介護の体験も話し合いながら、討論を重ねた。そこで導き出したウリ式デイサービスに必要な要素が「ウリ友達・食べ物・遊び・環境・歌」だ。 「遊び」に関しては日本の老人施設で働く同胞に知恵を借り、「歌」は当時、大学で音楽療法を専攻していた呉純愛さんの協力を得た。例えばデイサービス施設で流れる「エルファタリョン」はスタッフの作詞作曲。ハルモニらが毎日口ずさむ曲となった。 今春、開設したデイサービス施設は当初利用者が5、6人だったが、半年足らずで50人以上に増えた。同胞高齢者のニーズに合ったサービスが利用者の増加につながっていると思う。(語り・鄭禧淳所長、整理・張慧純記者。つづく) |