現場から−金順彦(在日本朝鮮人東京都教育会副会長・56)
力を合わせて教育権守ろう
進む都内外国人学校の交流
今まで私たちは朝鮮学校への理解を広げることで教育権利擁護の運動にもつなげようと、主に日本学校との交流を進めてきました。授業やスポーツ、文化など多岐にわたる触れ合いを通じて地域レベルでの交流は忙しいほど盛んになり、朝鮮学校に対する理解と支持は深まってきました。
東京23区の各当局から各種名目の教育補助が支給されるようになったのも、こうした地域での交流と無縁ではありません。現在、区によって名称は異なりますが、朝鮮学校に通学する児童生徒の保護者負担金軽減の補助が23区合計して年間1億円以上支給されているのをはじめ、大田区では今年4月から外国人学校振興費補助金(年間100万)を新設しました。ほかにも施設改修の際の補助などがあります。 こうした成果にもとづき私たちは3年程前、東京都庁に出向き、朝鮮学校の処遇改善、具体的には都からの補助増額を訴えました。東京都は、私立外国人学校教育運営費補助金という名目で、現在朝鮮学校に合わせて年間3592万円を支給していますが、「一条校」に比べると微々たるものだと言えます。 朝鮮学校への差別を解消すべきだと主張すると彼らは、「都内には外国人学校がたくさんあり、みな同じ扱いだ。朝鮮学校だけを特別扱いすることはできない」と答えました。 言われてみれば、日本社会で在日朝鮮人として生活する中で、差別や権利の面では「外国人=朝鮮人」という図式が頭にこびりついていました。それゆえ今まで都内の外国人学校との交流はほとんどなく、都内のどこにどんな学校があるのかも把握できずにいました。しかし調べてみると、朝鮮学校と同じ各種学校としての認可を受けている学校だけでも都内に約40校の外国人学校・国際学校がありました。 ◇ ◇ そこで私たちは1998年から、外国人学校同士が互いに話し合い学校間の交流を深める中で互いを理解し、共通の教育権利を守るため日本の行政機関に働きかけていこうと活動してきました。 各校を訪問して実情について話し合う中で、ほかの外国人学校でも「一条校」並みの待遇が受けられず学校運営や施設の改善や生徒たちの進学問題などで困難を経ていることなど、私たち朝鮮学校と同じ境遇に置かれ共通の問題を抱えていることがわかりました。また、世代が変わる中で子どもたちの民族性を育む問題や国際化の流れの中における日本学校との交流、外国人学校間の交流など、いろいろな問題について意見交換もできました。 その後、お互いに運動会や学校行事に参加したり、台湾で大地震が起きた時には中華学校の子どもたちに慰問金を送るなど、少しずつ交流の幅を広げていきました。 このような話し合いや交流の中で、合同イベントの企画が持ち上がりました。そして今年5月、外国人学校の存在をアピールし、多くの日本人に理解を得ることを目的とした「東京外国人学校合同絵画展」が東京都の後援のもと、4日間にわたり都庁内の都政ギャラリーで開かれました。 絵画展の総括を兼ねた食事会で各校校長や関係者らは、今回のイベントの意義について口をそろえて強調し、今後も外国人学校同士の交流を発展させていこうと話し合いました。 ◇ ◇ 最近、大阪での児童殺傷事件にともない東京都が都内の全小中学校に非常通報装置を設置するという知らせを新聞紙上で知った時は、すぐに各外国人学校にも連絡しました。 都庁に出向いて質したところ、外国人学校については考えていなかったとの返事でした。そこで、再び各学校と相談のうえ、各校が改めて都庁に相談に行くようにしました。こうして連携プレーをしながら働きかけた結果、東京都からすべての外国人学校も設置対象に含むことにしたとの連絡が入りました。これはまさに、外国人学校同士が協力した成果だと言えるでしょう。 こうした過程で、外国人学校同士が単なる交流に止まらず、それぞれの地位向上と権利拡充のためには何らかの形を整えて活動することが重要であり、それが大きな力になりうるのではと痛感するようになりました。兵庫では阪神・淡路大震災を機にそうした組織が作られ、大きな成果をあげていると聞いています。 組織発足に向けて今、私たちは大きな力を注いでいるところです。 |