医療−最前線

同胞愛


 ある日、「韓国」から国際電話がかかってきた。日本に留学中の息子が腹痛を訴え苦しんでいるので、病院で治療を受けたいとの事だった。私が勤めている病院に朝鮮語の分かる職員がいることを承知しての電話だった。母親は医師でもない私に「息子を助けてください」「飛行機ですぐに駆けつけますので、よろしくお願いいたします」と切実に訴えていた。

 私はすぐ、金銭に関係なく優先的に受け入れて診察するように外来に伝えた。後で確認した所、患者は検査の結果、膵炎で緊急入院となった。後で私が病室に行った時、本人は点滴中でベッドに横になっていた。病状を聞いたところ当初の痛みは取れたと言い病院の対応に感謝していた。

 母親の心情からすると異国の地で愛する息子から体調不良の知らせを受けてどれほど心配したであろうか。私の電話対応で安堵したようだった。

 翌日の午後6時ごろに母親が「韓国」から来院した。担当医は午後5時が過ぎていたが、わざわざ「韓国」から来るので待機していた。母親は幾度も頭を下げて礼を言った。数日後、その患者は無事退院した。母親と本人が私のところにあいさつに来たようだが、不在だった私の机の上には感謝のこもった手紙が置いてあった。

 私の勤務する病院ではこのような患者がよく来る。この患者さんも口コミで朝鮮語が通じる病院だとの事を知り来院したのだ。病院が地域に密着する事がどれだけ重要なのかを示す一例だ。(李秀一・医療従事者)

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