大学院入学資格弾力化から2年  朝大から続々合格者

引き続き力強い運動を


 既報のように先日、朝鮮大学校卒業生2人が初めて東京大学大学院の修士課程に合格した。1999年、当時の文部省(文部科学省)が大学院入学資格の弾力化措置を打ち出し各大学院・研究科の判断にゆだねたことにより実質的に朝大生にも国立大学大学院の門戸が開放された。以来、朝大からは今回の東大をはじめ京都大学、北海道大学、名古屋大学、神戸大学、東京農工大学、電気通信大学、東京学芸大学の各大学院修士課程に合格者を出している。朝大が、日本の大学と比べて遜色ないレベルの教育を行っていることを証明したことになるが、99年の弾力化措置は朝大そのものを認めたものではない。また朝高生に国立大学の受験資格はいまだ認められていない。(韓東賢記者)

大学院は個別審査で

 99年7月、当時の文部省が打ち出した大学院入学資格弾力化の方針は、大学院入学者選抜の改善について調査審議を進めていた文相の諮問機関、大学審議会の大学院部会が発表した報告書の中で示された。

 報告書は、「短大、高等専門学校、専修学校、各種学校の卒業者やその他の教育施設の修了者であっても、各大学院における個人の能力等の個別審査により大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めたもので22歳に達したものについては、当該大学院の入学資格を認めることができることとするのが適当」とした。当時進められていた一連の大学院改革の流れと内外のニーズに沿った決定であり、在日同胞と支持する日本市民らの運動の成果でもある。

 朝大卒業生の入学と関連しては、それまで認めないとしていた文部省の見解に反し、すでに多くの公私立大学大学院が独自の判断で入学資格を認めていた。さらに弾力化措置前年の98年には国立でも京都大学大学院、九州大学大学院の一部研究科が「大学卒業と同等以上の学力がある」と独自に判断して初めて受験を認め、京都大学大学院には一人が合格、入学した。

 ほとんどの大学院の募集要項には、大学卒業以外の出願資格「(本研究科・本研究科教授会・本大学院など)において、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」の項がある。この規定は、学校教育法施行規則第70条5に従ったものだ。京都大学、九州大学の一部研究科はこれを適用し、出願前に書類提出などの資格審査を課すことで事実上、朝大卒業者に道を開いた。

 99年の「弾力化措置」はこれを追認した形だ。つまり現実の流れに押されての決定だが、いわば年齢制限以外のすべての門戸を取っ払って各大学院研究科の判断にゆだねるというもので、文部省(当時)が朝大卒を大学卒として認めたというものではない。朝大卒業者の出願資格は相変わらず「大卒以外」の扱いだ。

 現実問題として資格審査が書類提出の場合、朝大の卒業証明書などで落とされることはほとんどないようだが、制度的に確かな裏づけがあるのではない。実際、門前払いした国立大学大学院もある。

門閉ざす国立大学

 このように、国立大学大学院の門はなんとかこじ開けられたが、国立大学は依然として朝高生に門を閉ざしたままだ。当時、大学院入学資格弾力化措置と同時に文部省が打ち出したのは大学入学資格の緩和ではなく、大学入学資格検定(大検)の受検資格緩和措置だった。

 それまで朝高生には大検の受検資格さえもなく、文部省の指導に従い受験を認めない国立大などを目指す場合、朝高と同時に通信制・定時制高校にも入学し、その学籍による特例を使って大検を受けることで大学の受験資格を得るという方法を取っていた。

 大学院については各大学院にゆだねながら、大学についてはあくまで譲らないという対応の差の根拠は何だろうか。前述した大学審議会大学院部会の報告書は、「大学(学部段階)の入学資格については、学部段階の教育が初等中等教育段階における学習指導要領を踏まえた体系的なカリキュラムにもとづく基礎的な学力の修得を基礎に展開されるものであることなどから、その修得がなされているか否かの判断について、高等学校の卒業または公的な試験の合格など統一的な取り扱いをすることが求められていることを考慮すると」、「適当ではない」としているが、詭弁に過ぎないだろう。現に、過半数の公私立大学は「その修得がなされている」と判断し、認めているのである。

 こうした国内の世論、また国連の各人権条約委員会の勧告などの国際世論を背に、受験資格の問題のみならずより切迫した課題である助成の問題まで含む民族教育全般の権利保障、朝鮮学校の地位自体の向上を図るため、総聯と在日同胞は引き続き力強く運動していかなくてはならない。

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