取材ノート
心配事
昨年1年間、仕事で各分野で活躍している日本の人たちにインタビューする機会に恵まれた。共通して質問したのは、世間を騒がしている子供の犯罪について何が原因だと思うのかということと、今後の世の中の行く末を楽観的に見ているのか悲観的に見ているのかということの2点である。
私自身、この1年の間に子供が生まれて父親になったことが、このような質問をさせた精神的な背景になっているようだ。子供の誕生は何ものにも代え難い喜びだった。しかし、子供ができたことにより、心配事も増えた。病気や怪我など日々のさ細なことはもちろん、これから無事に育ってくれるのだろうかというばく然とした心配が常に心のどこかにある。日本社会の今の有り様を見ると、どうも能天気ではいられない。 様々に言い方は違っていても、子供の犯罪は社会の反映である、これがインタビューした日本人の共通した意見である。将来に対しても悲観的に見ている人がほとんどであった。みんなそれぞれの立場で自分の国を良くしようと懸命になっているのだが、そんな話を聞いていて、日本社会のこととしてどこか冷めた気持ちでいる自分を発見したりもする。一世がどれだけ長い間日本に住もうとも、結果的に日本で死んでしまっても、日本は仮の住まいであったように、統一した祖国をもつ世代として生きる息子もいつか日本を離れる日が来るかもしれない。むしろそうあってほしいと思っている。(徹) |