春・夏・秋・冬

 久し振りに腹を抱えて笑った。第23回在日朝鮮学生文学作品コンクール入選作の「朝鮮市場に統一旗ひるがえる」(中級部1年散文部門1等)を読んでのことである

▼筆者の金宗泰君(東大阪中級)は3年前、大阪・猪飼野の「朝鮮市場」に住むハルモニの家に引っ越してきた。当初、ニンニクやキムチなどの匂いが鼻に付き、気分はよくなかったという。「このモントングリ(アホたれ)、出て行け! このブタ野郎!」という1世たちの怒鳴り声やサトゥリ(方言)に面食らったとも

▼こんなことも書いている。ある日、自宅の横の路地に隣接する家から煙が出て、消防車が来た。しかしそれは火災ではなく、ゴキブリ退治用の「バルサン」から発した煙であった。煙がむくむくと上がったため、横の家のハルモニが「火だ! 火だ!」と叫び、それを聞いて驚いたアジュモニが消防署に電話をかけたことが事の始まり。また本当に火災が起きたとき、「バルサンだろう」と勘違いし、そのままにして置いたために家が焼けたという、笑い話では済まされない出来事もあったという

▼と、同時に北南首脳会談の成果の喜びと、統一の雰囲気に沸いた市場の人々の姿も描写している。その日、みんなが涙を流し喜び、互いに手をつなぎ踊りあった。その行間から同胞社会の縮図を見るかのような印象を受けた。民族の「味」を感じさせてくれた文章だった

▼「統一したら大家族の『朝鮮市場』になるだろう」(金君)。その時、今度は「バルサン」ではなく、「統一だ!」と驚き叫ぶことだろう。(舜)

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