商工連がまとめた2001年版資料

「同胞商工人の経営課題」


 在日本朝鮮人商工連合会(商工連)商工部は15日、今年度版の参考資料「2001年の日本経済の展望と同胞商工人の経営課題について」をまとめた。その中から、パチンコ業を中心としたレジャー産業(遊技業)や、焼肉店をはじめとする飲食業など、同胞商工人が営む代表的な業態の現状と課題、今後の経営戦略に関する内容を紹介する。

業種別の現状・展望/

遊技 大手の全国展開に拍車

 財団法人余暇開発センターの「レジャー白書2000」によると、99年度のパチンコ市場の総売上(貸玉料)は20兆8800億円で、前年比0・4%減。参加人口も170万人減の1860万人となった。かろうじて20兆円市場を維持したが、参加人口は最盛期の3分の2程度で、厳しい状況が続いている。

 経営不振で廃業・閉鎖するパチンコ店が増加傾向にある反面、ゲーム性のある個性的な新機種が続々登場するパチスロ人気に支えられ、パチスロ専門店は好調だ。パチスロ台数は98年に100万台を突破、驚異的な伸びを見せている。

 好調店を多く抱える大手ホール企業の店舗展開は、2000年に入りさらに活発化、各都道府県域を超えた出店が目立つ。中堅企業による広域展開が活発化してきたのも去年の特徴で、自主規制撤廃地域の拡大が、その背景になっていることは言うまでもない。

 大手企業を中心にした全国展開の動きは、今年さらに拍車がかかるだろう。同胞ホール企業は、明確なビジョンと強固な経営体質を作り、厳しい環境に立ち向かっていかなくてはならない。

焼肉 進む「激安」「個性」化

 外食産業総合調査研究センターの推計に基づき日経流通新聞がまとめた外食産業の市場規模は、99年で前年比0・8%減の28兆5400億円と、2年連続で減少している。外食支出の減少や、弁当・総菜など「中食」との競争激化が響いたと見られる。

 朝鮮料理業界は、5000億円とも1兆円とも言われながら、年商100億円を超える企業が3社しかない「超拡散」市場。東京で名を売ろうとチェーン店が出店攻勢をかけ始めており、低価格化に拍車がかかりそうだ。

 このような状況下で生き残るには、自店のポジションを明確にすることが重要と思われる。

 昨年の「朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座」では、若者や女性のニーズを取り入れながら、同胞店の強みである家庭の味、民族の味とオリジナル料理の創作が重要だと参加者に訴えた。消費者にセールスポイントをはっきり明示し、経営面でも従来のどんぶり勘定から脱却できなければ、2極化が進む業界で負け組になるのは避けられない。

 消費者の安全・ヘルシー志向が高まるなか、衛生管理も重要な問題になるだろう。食材の見直しや従業員教育を徹底し、事故を未然に防ぐシステム作りが必要だ。

製造 重要性増すISO規格

 昨年12月に発表された日銀短観を見ると、大企業製造業の業況は改善(プラス10)しているが、中小製造業の業況判断は5割以上が「悪い」(マイナス16)と答えており、依然、厳しい状況にある。

 中小製造業を取り巻く環境は激変している。グローバル化の進展で世界中の製品が日本に流入し、製品間の差別化競争が進展しつつある一方、経済の成熟化に伴い消費者のニーズは多様化している。画一的な製品を大量生産する従来の生産システムは通用せず、創造性の発揮、研究開発活動などが一層重要になる。

 また、世界を相手に競争しなければならない現在、製品の品質向上、企業の信用力向上などの観点から、国際標準(ISO)や情報技術(IT)活用への関心が高まりつつある。

 2000年版「中小企業白書」によると、中小製造業のISO規格への対応状況は、ISO9001〜3(品質管理)は8%が取得、26%が審査登録を検討している。ISO14001(環境)は取得した企業は1%にすぎないが、23%の企業が取得を検討しており、関心の高さがうかがわれる。

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具体的な方策は…
効率アップと固定客づくり

 同胞商工人が多く従事する各業界の動向を細かく分析すると、企業経営の現場では競争が激化している。激変する経営環境の中で同胞商工人が勝ち残るには、明確な経営戦略と具体的な対策を立てて主導的に対応しなければならない。

ITで事業、管理

 情報技術(IT)の活用で、いわゆる「スピード経営」を実践していかなければならない。

 IT導入にあたっては、事業として活用するのか経営管理に活用するのか、導入目的を明確にすることだ。何のために導入するのかしっかり考えたうえで使わないと、単なる道具になる可能性がある。

 事業としての活用は、電子商店街、ネット販売などの商品販売事業(BtoC)、ネット技術を活用した企業間取引事業(BtoB)。BtoCによって、新規顧客の開拓、商品・サービスの販促効果拡大を狙うことができ、新たな収益が確保できる。BtoBの場合、商品の受発注、納品など取引業務がスピードアップし、不良在庫の削減などによるキャッシュフロー(現金収支)確保が期待できる。

 また、経営管理への活用は、経理、財務、生産、顧客、販売管理など機能別の業務管理、電子メールなど組織のコミュニケーションの道具としてITを使うこと。業務処理効率化による生産性向上、組織内の情報共有化が図られる。

地域密着で存在感

 限定エリアで他社を寄せ付けない商品・サービスを提供し、地域密着による存在感、ブランド作りを行う。例えば地域限定商品や地域限定配達などである。

 新規顧客の獲得とともに固定客作りが重要だ。むやみにチラシをまいたりダイレクトメールを送るのではなく、RFM法によって顧客の識別・選別を行い、販促手段と内容を考える。

 Rはリセンシー(直近購入日)、Fはフリークエンシー(購入回数)、Mはマネタリー(購入金額)を意味する。店に誰がいつ、これまで何回来て、どれだけ商品を買っていったかを分析し、最近来店した客、よく来店する客、あまり来店しないが1度来店すると多くの商品を買っていく客を識別することで、顧客の属性や購買行動に合わせて効果的な販促ができる。

リスクに迅速対応

 企業に対する不信感は、2000年に起きた様々な企業不祥事でより強まった。問題が起きた時に企業はいかに対応するか。リスクへの迅速な対応は、企業規模にかかわらず社会的責任として求められている。

 同胞商工人の場合、例えば飲食店では食中毒者が出た時にどう対応するか。パチンコ店なら不正への対応をどうするか。対策のマニュアル化など全社的に取り組む必要があろう。

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