世界GP目指すライダー
尹昌憲さん(名古屋市在住)
勝利求め走り続ける
新幹線と同じスピード、体ひとつで扱う
「優勝し、勝利のシャンパンを味わうのが最高の喜びです」――ヨシカワレーシングチーム所属のライダー、尹昌憲さん(名古屋市在住、27)は、レースを続ける理由についてこう語った。
昨年12月3日、全日本選手権参戦復活をかけた、鈴鹿サンデーロードレース最終戦「第36回NGK杯MFJエリアグランプリ(250クラス)」に挑んだ。同クラスで活躍する同胞は尹さん1人。しかし、本来の力を発揮することができず、成績は12位にとどまった。 最終戦には、全国4つの地域で開催されたレースの上位36選手が出場した。尹さんは2月の「ウエイトエリア第1戦」で優勝し、最終戦出場の権利を獲得していた。 レースに出場するためには費用もかかり、ライバルも多い。尹さんのような個人参加のチームは経費もかさみ、条件は一段と厳しくなる。 「仕事は誰よりも早いスピードで走ることと考えている」 レース以外の時間に内装などの建築関係の仕事をし、生活はレースを中心に回っている。「新幹線と同じスピードで走るマシーンを体ひとつで扱うレーサー。一瞬の判断が危険をまねき、勝敗を決める。そのトップに立ち、世界の舞台に飛び出したい」と大きな夢を抱いている。 ◇ ◇ モータースポーツは、ヨーロッパではすでに1世紀近い伝統を持つ。またモーターサイクルの世界グランプリの歴史もすでに半世紀になろうとしている。 日本では1963年に初めて世界グランプリが開催されて以来、新しい文化として若者たちの間に定着してきた。ヨーロッパでの2輪ロードレースの人気は非常に高く、つねに人気スポーツのトップスリーに位置付けられ親しまれている。 ◇ ◇ レースを始めたのは、愛知朝高2年の時、友人に誘われ原付のサーキットに参加したのがきっかけ。そして朝高卒業後、お金を貯め、サーキットのライセンス、普通自動車、中型自動二輪の資格を取得し、20歳になった93年から、本格的にロードレースを始める。以来これまで50戦以上のレースをこなしてきた。 95年に全日本選手権参戦資格を獲得。96年はシリーズランキング22位、97年は17位、98年は24位。昨年はチーム体制が整わず活動を休止した。今年からエリア戦に参戦し、現在に至る。 ◇ ◇ 同クラスのマシーンはレース用に開発されたもので、尹さんは97年型のHONDARS250Rに搭乗。レースでの最高速度は250キロに達する。その時間は十数秒で、視界は「こぶしほど」。アスファルトしか見えない。 レースを左右するのは、「集中力」「資金力」「技術力」で、ライダーはアクセルを踏み続け、ブレーキを我慢してコーナーを誰よりも早く抜け出すことを目差す。チームはどれだけよい環境を作れるか、メカニックはエンジンの調子を整え最高速度を出せるかにかかっている。 レースに勝利するのが難しいだけ、夢中になる。それだけに、「今度こそ」と意地になって駆け回る。いつ訪れるとも知れない納得の勝利を求めながら…。(羅基哲記者) |