取材ノート
相変らずの「朝・日ネタ」
年末は、マスコミ関係者も忘年会のシーズンだ。人脈づくりが大事な若手の場合、1晩で複数の宴席をハシゴすることも。記者もいくつかの席に顔を出し、入れかわり立ちかわりする隣席の面々と、自己紹介がてらその年の朝鮮問題について話し合ったりする。
その際の話題だが、一昨年までは「拉致」「テポドン」が主で、年忘れの席にも関わらず論議が過熱することもしばしばだった。だが昨年末は、それらが若干退き、ほかの話題が前面に出た。 まず1つが、直木賞を受賞した小説「GO」。中級部まで朝鮮学校に通った経験のある著者の金城一紀氏が、自身の生い立ちをモデルに書いた成長小説だ。ふんだんに盛り込まれた朝鮮学校での「ありそうでなさそう」なエピソードや、登場する朝鮮学校生らの粋でカラッとした物言いが面白い。 近年、マスコミも「在日ネタ」にはだいぶ慣れてはいるが、同著の「無帰属志向」ともとれる主張は刺激的だったらしく、宴席でも意見を求められたり聞かされたりで盛り上がった。 そしてもう1つの話題が、朝鮮外交だ。金正日総書記の手腕については皆、ただただ舌を巻いていた。 共和党政権の誕生、クリントン大統領の訪朝断念と、ここへ来て「ブレーキ」が懸念されている朝米関係についても、「米中関係はニクソン、フォードの共和党政権で下地を築いて民主党のカーター政権で国交を樹立、続く共和党レーガン政権で蜜月に至った。当時は冷戦で状況が違ったとは言え、米朝もここからが見物かも」という人もいた。 ただ、肝心の朝・日関係に話を振ると、出てくるのは「あの政治家の利権」「公安の点数稼ぎ」など、相変わらずのネタばかり。早く「前世紀の遺物」として総括し、朝・日関係でも前向きの話題をひねり出したいものだ。(金賢記者) |