司法試験に合格した
東京朝高OB 金舜植さん
同胞社会背負える存在に
民族教育糧にプラス思考で
昨年、数ある国家試験の中でも最難関と言われている司法試験を見事に突破した金舜植さん(29=東京・荒川区在住)は、外国人登録上「朝鮮」表示の、在日同胞3世で、男3人兄弟の末っ子だ。 今後、金さんは最高裁判所の司法研修所で1年半の研修期間を経て、弁護士登録される。 「試験は確かに大変だった。準備を集中的にやっていた時期は、気が付いたら手から本を離しているのは、寝ている時くらい、ということもあった。でも、1度もあきらめようとは思わなかった」 金さんの気持ちを支えてきたのは、座右の銘にしている「努力は勝利の鍵」だ。 金さんは、この言葉の書かれた掛け軸を、高校3年生の11月、クラス全員で行った祖国訪問先で見つけた。記念に1つくらい持っておこうと購入したのだが、それ以来、何か困難に遭遇すると、自分を励ます言葉になっていた。 そしてもうひとつ、中学、高校と6年間続けたサッカー部活動で培った「根性」と「気合」だ。その源にあるのは同じく高校3年生の7月、当時のソ連に海外遠征に出かけた際、サッカー部の指導教員から「人は限りなく、可能性を秘めているものだ。自分で限界を作るな」と言われた言葉だ。 そして、それらを総合して改めて、「大げさに言えば、時代のめぐり合わせだと思う。考えもつかない、なりたくてもなれない、今はそういう時代じゃない。やろうと思えば実現可能なのだから、努力あるのみだ」と言う。 ◇ ◇ 生まれつきのプラス思考なのか、とにかくどんなことにも前向きに取り組んできた。 明治大学の司法試験合格者祝賀会で、同胞らしき名前を4人ほど見つけた。だが、金さんが、あいさつを終えると、何人かが金さんのもとへ寄ってきて、「君、朝鮮語できるそうだね」「北朝鮮に行ったことがあるって本当かい?」などと質問が集中した。 この日だけでなく、「金」であること、「朝鮮」表示であること、高校まで民族教育を受けたことなどをマイナスに思ったことなど一度もなく、逆にすべてをオープンにしてきた。 これからどんな弁護士になりたいか、との問いに、「まだ、ピンと来ない。ただこれから在日同胞にとって、人権問題が非常に重要なウエイトを占めてくるのだけは確かだと思う」、と金さん。 ここ数年、世代はむろん意識も定住志向へと同胞社会の生活意識は大きな変化をとげた。 そうしたなかで、今後自分たち世代が担うべき役割について、「弁護士だからただの相談役でいい、というのではなく、同胞社会を背負っていける、そういう存在になりたい」と言う。 「これからは、統一朝鮮を念頭に、祖国も巻き込んで、日本でどんどん主張していきたい」。そんな話の1つ1つに、少しの気負いやてらいも感じさせない。金さんは、2002年から同胞弁護士として活躍する。(金美嶺記者) |