全国高校サッカー1回戦
大阪朝高、1―3で敗退
重圧はねのけ攻撃サッカー
次につながる戦い 「また来る」
「朝高イレブン、最後までよく戦った」「全国の同胞に希望を与えた」――。第79回全国高校サッカー選手権大会(日本サッカー協会など主催)1回戦、大阪朝鮮高級学校−桐蔭学園(神奈川)戦が12月31日、川崎市の等々力陸上競技場で行われた。大阪朝高は、7000余人の同胞の声援を背に健闘したが、1−3で敗れた。一昨年のインターハイに続き、またも「全国」の壁の高さを痛感する敗戦となったが、その姿は全国の同胞を大いに勇気づけた。 7千人の同胞、熱い声援 1万余人の観客の7割を、大阪と関東近県から駆けつけた同胞応援団が陣取った。 地元・大阪からはこの日、朝高の生徒と選手の父兄が観戦。府内の同胞400余人による合同応援団は、大型バス10台で会場に乗り入れた。 民族衣装を着た学生たちがチャンゴ(太鼓)を必死に叩く。横断幕には「イギョラ(頑張れ)朝高1」、「奇跡を起こせ!」の文字。朝高の勝利を願い、試合前から大声援を送った。 だが、選手の緊張はこの時、ピークに達していた。MF権隆旭選手(2年)は「自分たちのサッカーができるか不安だった」。PK戦の末に惜敗した一昨年のインターハイと同様、ピッチに向かう表情は硬い。張り詰めた空気が記者席や観客席にも伝わってきた。 キックオフ直後の数分間こそ探り合いが続いたが、朝高は、そつのない手堅い守りとテンポ良いパス回しで徐々にペースを握られ、前半7分にフリーキックから先制を許すと、12分、26分と連続失点。「立ち上がり(の数分間)の悪さという、うちの弱点を突かれてしまった」(DF梁英二主将=3年)。 「負けると思っているやつは出ていけ。やる気のある、勝ちたい者だけピッチに立て」。ハーフタイム、意気消沈する選手たちに金正海監督のゲキが飛ぶ。 これで目が覚めたか、後半、朝高は怒とうの攻撃を展開した。後半11分、中央付近からのスルーパスを権選手が右足で力強く蹴りこみ、ゴールネットを揺らした。待望の反撃ののろしに、沈んでいた応援団にもようやく活気が戻った。 その後も、朝高は押しぎみに試合を進め、相手陣内で再三チャンスを作った。ロスタイムも必死に走って次の1点を果敢に狙った。だが、前半の3失点が響き、1−3で試合を終えた。 相手校の校歌を耳にし、涙ぐむ朝高イレブン。金監督は「良いコンディションで試合に臨めたが、立ち上がりを崩された。実力の差でしょう」と、敗戦の弁を語った。選手たちも口を揃えて「悔しい。来年も来たい」と声を振り絞った。 だが、敗れはしたものの、朝高の奮闘は「一歩前進」(スポーツ報知1日付)と高い評価を得た。「1対1での粘り強さと勝負に対する執着心の強さからボールを支配し、再三桐蔭ゴールを攻め立てるが、あと1歩及ばず。最後まで諦めずプレーした大阪朝鮮にエールを送る」とは、戦評者のコメントだ。 観戦した同胞からも温かい拍手が送られた。DF李義成選手(3年)のオモニ、金徳子さんは「よく戦ってくれた。彼らの姿に希望が見えた」と、息子たちの奮闘に感激を隠さない。 大阪朝高サッカー部後援会の姜達来会長は「彼らにはすべてが初経験。今回の出場と敗戦が今後へのステップになる」。一昨年のインターハイを主将として戦ったOBの金洪周さんも、「後半に見せた気概は来年につながるもの。また、ここに立ってほしい」と、後輩の戦いぶりを称えた。 実力で府の代表の座をもぎ取り、憧れの「冬の選手権」のピッチに立った大阪朝高イレブン。その目は早くも先を見据えている。目標は、再びこのピッチに立つことだ。(柳成根記者) ◇ ◇ 同胞の声援励みに 金正海監督の話
選手には、同胞応援団が掲げた横断幕の文字を読ませて、緊張感を解かせた。多くの同胞が来てくれて励みになった。一点を返した後の十分間で追加点を奪えていれば、流れが変わったかもしれない。相手が強かったということ。出直しです。 梁英二主将の話 (主将として)みんなには、集中だけは切れないよう言い続けたけど、やっぱりどこかにプレッシャーがあったのかも。後半は自分たちのサッカーができました。夢は後輩たちに託します。 権隆旭選手の話
ゴールした瞬間は、喜びよりも、まだ終わっていない、もう一点入れるという気持ちでいっぱいだった。試合で得たものは経験。次につながる朝高のサッカーができた。来年も必ず出たい。 |