地名考/郷土の自然と伝統文化
連載に当たって

郷土を知る道しるべに

司空 俊


 故郷は私たちのすぐ傍らにあるものである。在日同胞の故郷は大部分が南である。1世の同胞は、美しい自然と温かい人情、懐かしい山野のなかに幼友達を思い浮かべ、別れて久しい肉親を気づかい涙を浮かべる。

 半世紀以上、分断の狭間で生きてきた1世は故郷を片時も忘れることがなかった。民族を生き、良心を守るため行くことすらできなかった故郷…。待ちに待って、ようやく故郷の土を踏むことができた総聯故郷訪問団の同胞たちの胸中に去来したものは何だったのか。

 祖国愛は祖国を知ることから始まる。民族愛は民族を知り、民族的な自覚を高めるためにある。民族愛のなかで最も具体的な表象が郷土愛である。

 ある詩人は、故郷は遠きにありて想うものと歌ったが、ただ単にそういうものだろうか。

 民族史の転換をもたらした2000年6月15日。民族の幸福とともに、一家族と個人の幸福を論じることが夢でなくなった歴史的な日。家族離散を余儀なくされてきた同胞たちにとって、故郷を身近かなものとして感じることのできた瞬間であったに違いない。

 祖先が育んでくれた母なる祖国の大地を思い浮かべつつ、私たちは21世紀、統一祖国と民族自立による未来の発展を夢み、堂々と故郷の土を踏むこと だろう。そして、故郷は、祖国は遠くにあるものではなく、単なるノスタルジアではなく私たちのすぐ傍 らにあるものになるだろう。

 統一祖国の夢が、民族の自尊ときょう持が同胞たちの胸中にほうふつと沸き上がっているなかで、今号から故郷の地名について興味ある一面を提供し、それを通じて一地域において伝統的な生活文化がどう培われてきたのかを解説していきたい。2、3世同胞たちが自分の故郷を見近なものとして感じられるよう分かりやすく、解説していこうと思っている。(朝鮮大学校教員)

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