それぞれの四季
正月の薬飯
パク・スネ
薬飯、薬食(ヤッシッ)とも言う。本来は1月15日が習わし通りだが、本国でもあまりこだわらず、めでたい日に食べるというので、薬飯はわが家の正月の定番になった。子供たちが大好きだということと、時間がたっぷりあるときしか作れないからだ。2日前から準備が必要なので、仕事の合間に、とはいかない。
あずき、黒砂糖、蜂蜜、干し柿、栗、なつめ、甘納豆、干しぶどう、松の実、くるみなど材料をそろえ、あずきをつぶさないようにゆでる。そのゆで汁にもち米を一晩漬ける。紅い色が付いた後は、柔らかくなるまでひたすら蒸す。蒸し上がったところにほかの材料と調味液を入れ、また蒸す。母から教わったレシピだが、数十年後、漢文の古書のなかでその薬飯に出会うとは思ってもみなかった。 李朝時代の古書に書いてある通りの作り方だったのだ。薬飯の由来は新羅の時代にさかのぼる。烏が王の命を救ったので、「烏足茸(オジョッヨン)」を入れた薬飯を烏に供えたのが始まりという。子供たちにそんな話をしながら甘い薬飯を食べるのは、幸せなことだ。こんな些細なことが、子供に「民族」を知らしめるきっかけになればと都合のいいことを考えている。 去年はたくさん作ったので、朝鮮古典文学を研究する「漢文ゼミ」の学生たちにもおすそわけした。「慵齋叢話(ヨンジェチョンファ)」という李朝時代の古書から薬飯の由来を記している部分を訳出する口実にさせてもらった。新羅時代の人々が食べた物を、新羅時代のレシピ通り今食べられるなんてロマンでしょ、などと言いながら。(朝鮮古典文学専攻) |