取材ノート
介護と同胞社会とニューエコノミー
介護保険の開始前、社会の超高齢化で爆発的な需要が見込める有望市場と期待されていた介護ビジネスだが、ことはそう甘くなかった。大々的な拠点展開でシェア獲得に走った大手など、2ヵ月で規模半減という有様だ。主因は需給不均衡やマーケティングの甘さにあるとされるが、介護は利用者の個性や家庭事情など、人間くさい要素が複雑にからむ営みだけに、需要を量りにくいのではないだろうか。
こうした現状を取材しながら、米国のニューエコノミー論のことをよく考える。ニューエコノミー論とは、情報技術革命で生産性が飛躍的に向上し、インフレなき持続的成長が可能になるとする主張で、米経済の高原景気を指すものだ。これには、米国内にも「絵に描いたモチ」との論調があるが、インターネットの普及で電子市場が誕生、距離に制約されない商取引など、革新が起こっているのも事実だ。うのみにはできないまでも、しっかり見ておきたい「絵」ではある。 目下、介護ビジネスでは、地域密着型が需要確保において有利とされる。 だが、利用者の千差万別の個性に対応するにはやはり、市場を広くとらえたビジネスも必要だ。 いくら地域密着でも、採算の合わない少数の要望は切り捨てざるを得ない。狭い市場で切り捨てられ、各地に散在する需要を、距離を超えてまとめられれば、採算を取る余地も出てくるはずだ。そのためには無論、技術、ビジネスモデルにおいて、ニューエコノミー論ばりの革新が避けて通れない。 同胞高齢者向けサービスが同胞人口の多い地域から始まり、少ない地域ではまだ見られないという格差も、距離と需要の問題だ。解消するにはやはり、事業感覚を大胆に革新する必要があると思う。 (金賢記者) |