偏向教科書

「日本政府が加担」
日本の市民団体、アジア被害国


 日本の植民地支配、侵略を受けたアジアの被害国政府や諸団体は、「つくる会」の教科書検定申請に厳しい非難の声を上げている。
 元日本軍「従軍慰安婦」の調査をしている「中国慰安婦研究センター」主任の蘇智良・上海師範大教授は18日、コメントを発表し、「侵略戦争最大の被害国として大変憤慨している」と怒りをあらわにした。

現行7社も大幅後退
「慰安婦」記述は3社のみ

 尹貞玉・「韓国挺身隊問題対策協議会」共同代表も同日、声明を発表し、「日本政府は、日本軍の『慰安婦』制度に関する関与や強制性について官房長官談話で公式に表明している。教科書から記述を後退させるなら、被害国を蔑むだけではなく、自分自身をも蔑むことになる」と指摘した。

 被害国が憂慮しているのは、「つくる会」の教科書だけではない。現行7社が検定を申請している歴史教科書が加害の記述を大幅に減らしている点だ。

 日本の歴史教科書の内容は80年代半ばから改善が進み、90年代になって不十分ながら侵略の事実が記載されるようになった。97年春からは全社の中学校教科書に、「従軍慰安婦」問題が登場した。

 しかし、このたび申請された教科書を見ると、「従軍慰安婦」の記述が七社(「つくる会」の教科書を含めると8社)から3社に減っている。しかも、「慰安婦」問題を「日中15年戦争、アジア太平洋戦争」の部分で扱っているのは2社で、他の1社は戦後補償のところだけで扱っている。また、「慰安婦」という用語を使っているのは1社のみ、他の2社は「慰安施設」という記述だ。「従軍慰安婦」の記述を削除した4社の教科書占有率は80%を越えている。

 加害記述が後退したのは、「つくる会」の運動と無関係ではない。まさに「つくる会」は、現行教科書に攻撃の的を定め、「『偏向』している」、「自虐的だ」と一大キャンペーンを張ってきたからだ。藤岡信勝・東京大学教授らが発起人となり、97年1月に発足した「つくる会」は、鹿島建設など大手企業の経営者や国会、地方議員などのバックアップを受けながら展開されてきた。

 今回、各教科書会社が加害事実の記述を大幅に削減した背景には、政府、文部省の圧力があったという指摘もある。(子どもと教科書全国ネット21」の俵義文事務局長)

 98年6月、町村信孝文相(当時)は「歴史教科書の近代部分は偏向している。検定提出前に是正できないか検討している」と国会で答弁した。

 歴史から目をそむける一連の動きに国家が加担しているこの事実に、被害国は最大の憂慮を示しているのだ。

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