それぞれの四季

金魚も星も笑って

李錦玉


 幼い子供の光景を鮮やかに思い出す時がある。

 住まいのすぐ横の公園で夏の盆踊りがあり、にぎやかに屋台が並ぶ。それを楽しみにわが家へ遊びに来た孫のヒョンミは、2歳と少しだったか―。

 電灯の明りの下で真っ赤な花びらのように、金魚すくいの金魚が泳いでいる。ヒョンミはしゃがみこんで金魚に話しかけた。

 「きんぎょさん、わらって、わらって!」

 それを聞いたてきやの兄さんがふたり

 「おい、おい、金魚に笑えだとよぉ」

 と吹き出した。そして、回りの大人たちの顔も、みんなほころんだ。

 初級部5年の夏休みに願いかなってヒョンミは、祖国の白頭山へ登った。頂上の天池もはっきり見ることができた。

 その日の夕食後、親子連れの20数人ほどが約束でもしたようにホテルの外に出て、夜空を仰いだ。地面に腰を降ろして、雲のかけらもない深いあい色の満天の輝く銀河に眼を奪われた。そして、誰いうともなく、吸い込まれるように、地に横たわった。子供たちは面白がって仰向けになり、手足を広げて大の字になった。地の温もりが心地よく体に伝わってくる。手をのばせば、つかめそうな星の光を全身に浴びて、なぜか胸が熱くなった。みんな、しいんと黙ったままだ。祖国の大地を感じているかのようだった。その静寂を子供の声が破った。

 「あっ、お星さまが笑った!」

 大人たちが思い出したようにざわめいた。流れ星だった。星が笑うって、なんだろう。チカッと光ったのかな。金魚の笑顔はどんな顔かな。子供って本当にすてき! ふしぎ!(童話作家)

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事