取材ノート

「私たちのチャンピオン」


 ボクシングWBC世界スーパーフライ級の新チャンピオン、洪昌守選手(25)が、出身地東京に「凱旋」した約1週間を取材した。どこへ行っても、同胞たちの歓迎ぶりは普通ではなかった。総聯も組織をあげて、かつてない扱いで「ウリ(私たちの)チャンピオン」誕生を大々的に祝った。まさにホンチャンス・フィーバーの一週間。みんな、なぜそんなに熱狂するのか。

 それは、彼が、コアな「総聯コミュニティー」から、そうした出自、バックボーンを隠すことなく、むしろそれを力にしてメジャーな世界に飛び出した初めてのヒーローだからかもしれない。地域の総聯組織と密接なつながりのある家庭で育ち、初級部から高級部まで、すべての学歴を朝鮮学校で終え、今も住んでいる大阪の地域で青年同盟の班長まで務めている。

 芸能界やプロスポーツ界に在日同胞が多いのは公然の秘密だ。なかには「総聯コミュニティー」で育った朝鮮学校出身者もいるが、こんなにあからさまに自らのバックボーンを露にし、丸抱えにして、それをそのままその世界に持ち込み、頂点を極めた者はかつていなかっただろう。

 「総聯コミュニティー」で育った朝鮮人としての「カッコイイこと」「正しいこと」を追求し続けた彼を、同じ土壌で育った同胞と組織は力いっぱい応援した。そして彼は、晴れ舞台の世界戦を、応援してくれたすべての同胞の「祝祭」として演出し、さらには栄光をつかみ取ってくることでその期待に十二分に応えた。両者の思いはがっちりかみ合っていた。
 試合の1ヵ月前、彼は「勝って『歴史の人』になりたい」と言っていた。「ウリ チャンピオン」として、彼の名はみんなの記憶にしっかりと刻まれたに違いない。(韓東賢記者)

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