春・夏・秋・冬

 南の映画が、日本をはじめ国際社会に広く進出し注目されている

▼友人の勧めで、今年の上半期、南で大ヒットした「ペパーミント・キャンディー」を見た

▼アジアフォーカス・福岡映画祭(8〜17日)でも上映された同映画は、1人物の過去を通して現代史の様々な局面と矛盾を浮き彫りにした力作だ

▼99年、20年ぶりに開かれた工場の同窓会。昔ピクニックに来た同じ河原に同僚たちが集まる。再会を喜ぶ仲間をしり目に、すべてを失った40歳の男・ヨンホが鉄道の高架橋に昇る。「昔に帰りたい」と叫ぶ彼の目の前に列車が迫ってくる。そこから物語は彼の20年間の人生をさかのぼり始める

▼妻に見放され、同業者にも裏切られたヨンホは無気力と絶望の極致に達し自殺まではかろうとする。そんなある日、訪ねてきた中年男・クァンナの案内で過去互いに愛し、いま、危篤状態に陥っているスニに出会う。歴史が作った権力の下手人・ヨンホ。暴力的な狂気の時代に刑事職につき、5月の光州事件では軍人として民主化の鎮圧を目撃し衝撃を受ける。そして、スニとペパーミント・キャンディーを食べながら恋に浸る青年に戻る

▼「小さな加害者」であると同時に「大きな被害者」でもあった彼の生を通して、隠された時代の社会相をえぐる

▼ヨンホは言う。「それでも生は美しいものなのか」「私は帰る」。ひとことで言い表せない重みがあった

▼つねに、忘れかけた生に対する省察を自ら促し、向上していかなければならないことを、改めて教えてくれた。(舜)

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